将来に備えて「稼ぐ」「貯める」も必要ですが、ときには思い切って「使う」ことで人生が味わい深いものになることも。趣味に、移住に、推し活にと、ARIA世代らしく人生を謳歌する女性たちは、収支のバランスをどう考えながら、何にお金を投入しているのでしょうか。人生を豊かにする「楽しいお金の使い方」を探ってみました。

 空前のキャンプブームで、キャンピングカーに注目が集まっています。注文しても納車までに1年以上待つというケースもざらです。アウトドア志向が高まっているところに、災害などへの備えにもなると話題になり、さらに新型コロナ禍で「キャンプは比較的安全なレジャー」と人気に火が付きました。薬膳料理家の阪口珠未さんは、今回のブームが訪れる10年以上前に「これからの10年間、今でないとできない体験をするために」とキャンピングカーを購入。その結果、得られたものとは?

阪口珠未(さかぐち・すみ)さん
阪口珠未(さかぐち・すみ)さん
漢方キッチン代表、国立北京中医薬大学提携 日本中医薬大学講師。文科省国費留学生として北京中医薬大学で中医学を学び、帰国後、漢方薬店での漢方カウンセリングなどを経て、1999年に漢方キッチンを設立、東京・恵比寿で薬膳スクールと薬店を主宰。企業や自治体などでコンサルティング実績も多い。著書に『老いない体をつくる中国医学入門』『365日のゆる養生』など

家を手に入れる代償として「自由を売りたくはない」

編集部(以下、略) 阪口さんがキャンピングカーを購入したきっかけは?

阪口珠未さん(以下、阪口) 購入したのは2010年で、そのころは夫の会社の同僚などが続々と家を購入していて、賃貸住宅にこのまま住み続けることに私たちは不安や焦りを感じていました。住んでいたのは東京・目黒、私の勤務先の近くです。マンションを購入するとなると1億円近くになる。背伸びして何十年もの住宅ローンを組むのは嫌だね、というのが私たちの価値観でした。10年くらいで返せる金額ならいいけど、30年も先の未来は確約できないし、家を手に入れる代償として自由を売りたくはない。

 じゃあ、私たちが今本当に欲しいもの、必要なものは何だろうと考えたら、答えは「この先の10年間、子どもと一緒に過ごす時間を充実させたい」というものでした。娘は当時3歳。週末などにずっと一緒に過ごせるのは、中学生くらいまでだろうと考えると、今すぐ私たちが娘と一緒に楽しみたいと思ったのは、山歩きやキャンプでした。私も夫もそれぞれ自然が身近な環境で育っていたから、娘にも、週末には郊外のショッピングセンターに行くだけでなく、自然の中で楽しむ経験をさせたかったんです。

―― とはいえ、普通の車ではなくキャンピングカーとなるとかなり高額なのでは。いくらくらいになりますか?

1台のキャンピングカーを手に入れることで、阪口さんの人生はどんなに豊かになったのか。詳しくは次ページ以降で紹介します
1台のキャンピングカーを手に入れることで、阪口さんの人生はどんなに豊かになったのか。詳しくは次ページ以降で紹介します