自分の「強み」をしっかり把握していますか? そして、その強みを最大限に生かす働き方ができていますか? 先が見通しづらく、環境が変わりやすい今、大きな武器になるのは自分の強み。ただし、強みは不変的なものではありません。定期的に見つめ直し、ブラッシュアップすることが必要なのです。ではどうやって? 個人やチームの強みの見つけ方、その磨き方をお伝えします。

 リーダーとして、メンバーの強みが存分に生かせるチームをつくるにはどうすればいいか。Googleで人材開発やリーダーシップマネジメントに従事し、現在はコンサルタントとして活躍するピョートル・フェリクス・グジバチさんは「最も大切なのは、メンバーの心理的安全性。チームづくりの原理原則は、世界共通です」と言う。なぜ心理的安全性が重要なのか、どうすれば心理的安全性が高い組織をつくれるのか。そして、リーダーやマネジャーが取るべきアクションについて聞いた。

プロノイア・グループ代表 ピョートル・フェリクス・グジバチさん
プロノイア・グループ代表 ピョートル・フェリクス・グジバチさん
2000年に来日。ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、11年にGoogleに入社し、人材育成部門を担う。15年に独立して現職。戦略コンサルティング、経営者コーチング、新規事業開発、研修などを手掛ける。19年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』(朝日新聞出版)、『パラダイムシフト』(かんき出版)など著書多数。ポーランド生まれ

尊敬・信頼し合える「ラポール」がチームの理想

編集部(以下、略) 2012年、米Googleが「生産性の高いチームの特性」を明らかにしたプロジェクトで「心理的安全性」の重要性が指摘され、世界的に注目されるようになりました。改めて、心理的安全性とは何かについて教えてください。

ピョートル・フェリクス・グジバチさん(以下、ピョートル) 心理的安全性とは、「自分らしさを発揮しながらチームに参画できる」という実感のことです。自分の長所が組織の中で生かせている状態とも言えます。誰しも「チームの一員として認められたい」という気持ちを持っていると思いますが、その気持ちを大切にしましょうということ。しかも、それは結果を出している世界中のチームがやっていることです。

 メンバー同士が尊敬し合って信頼し合えるような、心理学用語で「ラポール(和やかな心の通い合った状態)」が理想です。ラポールを保てる環境は、個々のメンバーが長所や強みを生かせる土台になる。心理的安全性の有無は、パフォーマンスとも相関関係があるのです。

 世界的な経営思想家であるゲイリー・ハメル氏が提示した「能力のピラミッド」をご存じでしょうか。ハメル氏は、「企業が繁栄するかどうかは、あらゆる階層の社員の主体性、想像力、情熱を引き出せるかどうかにかかっている。そしてそのためには、全員が自分の仕事、勤務先やその使命と精神面で強くつながっていることが欠かせない」と言います。心理的安全性の低いチームは、メンバーの能力をレベル1か2、せいぜい3までしか引き出せないでしょう。心理的安全性を高めれば、レベル4主体性、5創造性、6情熱へと高めていくことができます。

―― チームや組織の心理的安全性は、どうやって高めていけばいいのでしょうか?

ピョートル マネジャーは、できるだけ早い段階でメンバーの本音や愚痴を聞けるような状態を作るのが理想的。メンバーの自己開示ができている状況をつくることが重要です。有効なのは、定期的に1on1ミーティングを行うこと。Googleでは、マネジャーは週1回1時間、必ずメンバーと1対1で面談をしていました。週1回、1時間が難しかったとしても、定期的にメンバーと直接話し合う場をつくったほうがいい。1on1はチームづくりには欠かせません。

―― 1on1には苦手意識を持つマネジャーが多いと感じます。意味がないのでは? と思うメンバーも出てきそうです。心理的安全性を高めるための1on1、効果的な1on1のコツはありますか?