デジタル技術で生活が変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の時代と言われても、SNSもネット上の仕組みも、いまいち使いこなせていないと感じていませんか? やってみたら思った以上に世界が広がるネットの世界。仕事に、趣味に、クラウドファンディングやSNSやYouTubeを活用して、人生が豊かになってきたという人の声を聞いてみました。

 SNSはもちろん、PC操作が未熟でも、ネット上で資金を集めて夢をかなえることはできる。「クラウドファンディングで出版資金を集めようなんて厚かましいわよね」と笑うのは、北海道札幌で長年インテリアデザイナーとして活躍してきた井上共子さん。たくさんある「やりたいこと」の第一歩として絵本づくりに挑戦した彼女がクラウドファンディングで成功できたのは、多くのサポーターがいたからだとか。

井上共子(いのうえ・ともこ)さん(76)。75歳の誕生日を迎えるタイミングで、クラウドファンディングに挑戦し、長年の夢だった絵本の出版を実現させた
井上共子(いのうえ・ともこ)さん(76)。75歳の誕生日を迎えるタイミングで、クラウドファンディングに挑戦し、長年の夢だった絵本の出版を実現させた

夫の死で考えたこの先の人生「まずは自分のやりたかったことに挑戦」

編集部(以下、略) 井上さんは、2020年に絵本を出版されたそうですが、何かきっかけがあったのですか?

井上共子さん(以下、井上) 以前、私は夫と設計事務所を経営していて、夫が設計を、私はインテリアデザイナーの仕事をしていました。

 2017年3月に夫が亡くなったんです。設計事務所をたたむことにしたのですが、その後始末が今も大変な状態です。インテリアデザイナーの仕事のほかに、専門学校や大学で非常勤講師もしていたのですが、それらの仕事は少子化も重なって70歳で定年になったし、さて、この先どうするか。夫の作品集も作ってあげたいし、と考えていたんです。その足がかりとして、まずは自分のことをやらないと人のものも作れないなと思って、19年に絵本の出版に挑戦しようと決めました。

 その当時私は74歳。まだ元気だけど、20代、30代のときの元気さとは違います。じゃあ、これから先の5年、10年の仕事や人生をどう方向付けようかと考えたときに、とにかく動こう、まずは本を作ってみようと思ったんです。

 数人の友人が手伝うよと名のりを上げてくれました。さて出版の費用をどうしようと思ったときに、友人の娘さんがクラウドファンディングで成功した経験があって、いろいろ教えてもらったのがきっかけで挑戦してみようと思いました。クラウドファンディングサービスのREADYFORも彼女に教えてもらったんです。