海外部門で活躍できるのは「語学力が優れた人」と思っていませんか。実際には「英語は必要になったとき必要なことを学んだ」という人も多くいます。社内公用語化など、「何はなくともとにかく英語」という風潮に反対の立場を取る成毛眞さん。英語以上にアメリカ人の思考のクセや交渉のコツを学べと語る英会話トレーナーの小林真美さん。そして「ペラペラ英語」でなくてもビジネスで「堂々と勝ってきた人」3人の体験談を紹介します。

下手で当たり前、と開き直る「年の功英語」

 定年をきっかけにパソコンを独自に学習し、2017年に81歳でiPhoneアプリを開発。同年、米国アップル社による世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待されるなど、今や最高齢のプログラマーとして世界的に有名な若宮正子さん。

 2018年2月には国連でも講演。司会者に「日本のロックスターのような人」と紹介され、「高齢者にはデジタルスキルが重要」と英語でスピーチして話題を呼んだ。数々の大きな国際舞台に立ち、さぞ英語が得意かと思いきや「全然ダメ。下手で当たり前と開き直っているだけよ」と堂々宣言。実は、若宮さんの世界デビューの立役者は「Google翻訳」だったという。80代で一躍世界的な有名人になった若宮さんの「年の功英語」「サバイバル英語」とは?

若宮正子さん
若宮正子さん
1935年、東京都生まれ。2017年に81歳でiPhoneアプリを開発。同年、米国アップル社による世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待された。40代から月に1度、英会話教室に通って英検準一級を取得。英語力は一人旅で磨いた。

「できる」のではなく「やるしかない」から英語で話す

―― 若宮さんといえば、2年前、米ニュースメディア・CNNが「世界最高齢のプログラマー」として紹介したことで一躍有名に。国際舞台で英語スピーチを披露される堂々たる姿も印象的でした。

若宮正子さん(以下、敬称略) そうですか? 私の英語なんてインチキイングリッシュ。一言一句、正確で上品な英語を話す気なんて一切なし。きれいな英語を話すことが目的ではなくて、必要にかられて、なんとか拙い英語を話してるだけなんですよ。あぁ、そういえば、急ぎで電話をかける用事があるんです。ちょっといいですか(と、スマートフォンを取り出す)。

“Hello, This is Masako Wakamiya. Can you speak Japanese? Ah...I want to contact with Mr.○○. Pardon? OK, I will call you tomorrow anyway. Thank you very much.”

 ごめんなさいね。ちょっとエストニア大使館に急ぎの用事があったもんだから。今も日本語が通じるかと思ったら通じなかったから、慌てて英語を話すハメになっちゃった。私の英語はいつもこんな具合です。

エストニア大使館に電話中の若宮さん。「日本語が通じなかったから、慌てて英語を話すハメになっちゃった。一言一句、正確で上品な英語を話す気なんて一切なし」
エストニア大使館に電話中の若宮さん。「日本語が通じなかったから、慌てて英語を話すハメになっちゃった。一言一句、正確で上品な英語を話す気なんて一切なし」

―― とっさにスラスラと話せるのがすてきです! 英語の勉強を続けていても、いざ外国人と話す場面となると、モジモジしてしまう人は多いですよね。なぜ若宮さんは臆せず話すことができるのでしょう?

若宮 「できる」のではなくて、「やるしかない」から話しているだけです。例えば、今の電話の用事は何だったかというと、私が友人と自主的に始めた「電子国家エストニアにおける、高齢者のICT利用状況」についてのネットアンケートを拡散する協力を大使館に仰ぎたかったから。余裕なんてゼロ。話さざるを得ない用事があるから、なんとか話しているんです。

―― 若宮さんは、「Google翻訳」も頼りにしているそうですね。

若宮 はい。非常に便利なので、毎日のように使っていますよ。最近は、Facebookでつながるお友達も外国の方が多いから、世界各国の言葉で連絡が来ることが増えまして。その都度、返事を書くのに重宝しています。