「新しい生活様式」が示されている今、私たちの働き方にも、暮らし方にも、見直しや工夫が求められています。急激な環境の変化にストレスや不安ばかりを覚えるのではなく、「千載一遇の機会」と前向きにとらえるにはどうしたらいいか。暮らし方、家のワークスペースづくり、副業による収入先の分散、学び……。今こそ一歩を踏み出したいことについて取材しました。

 コロナ禍による外出自粛とテレワークの実践によって、多くの人が「オフィスに出社しなくても、仕事ってできるんだ」ということを実感したこの数カ月。これまでの住まい探しは「通勤しやすい場所であること」が主要な条件の一つでしたが、もし今後も勤務先がテレワーク継続を許可し、通勤そのものが必要なくなれば、住む場所の選択肢はぐっと広がります。そこで関心が高まっているのが、「地方へ移住してリモートで働く」というライフスタイルです。地方移住の実情に詳しいお二人に、移住にまつわる最新の動きや、具体的な検討の際に重要となるポイントなどを聞きました。

「いつかは移住」の潜在ニーズがコロナ禍で顕在化

 「過去にも、東日本大震災を通じて東京一極集中のリスクやライフラインの脆弱さが明らかになり、暮らし方を見つめ直そうということで地方移住の動きが若干ありました。ただ、移住において大きなネックになるのが仕事。それが今回、多くの企業でテレワークが推奨されたことで、移住へのハードルがすごく下がった。そのことを口にする移住希望者は多いですね」

 そう話すのは、2007年に大阪から山口の周防大島に移住した、いずたにかつとしさん。以前は証券会社に勤めていましたが、移住後は保険会社勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。12年からは周防大島町の「ふるさとライフプロデューサー」として、移住希望者の相談にも乗っています。

 いずたにさんは去る5月31日、「オンライン全国移住フェア」を開催しました。もともとは同日、NPO法人ふるさと回帰支援センターが大阪で移住フェアを開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止に。出展自治体の一つとしてフェアに参加予定だったいずたにさんは、「自治体にとっても移住希望者にとっても代わりのイベントが必要だろう」と考え、オンラインで開催することを発案。個人で主催したにもかかわらず、全国から138の出展団体を集めました。

 オンラインにしたことで、北海道から沖縄、さらには海外まで幅広い地域から173人が参加。中心世代は20代から50代で、コロナを意識して移住を検討しているという人が約6割にのぼったといいます。「漠然と『いつかは移住』と思っていた人たちが、コロナ禍で実行へ背中を押された格好になった。潜在ニーズが顕在化されたところがあると思います」

山口県周防大島町のふるさとライフプロデューサー、いずたにかつとしさん。今年からは、地方同士が連携して魅力を発信していく「LOCONECT」の活動もスタートさせた。第2回「オンライン全国移住フェア」は2020年10月4日に開催予定
山口県周防大島町のふるさとライフプロデューサー、いずたにかつとしさん。今年からは、地方同士が連携して魅力を発信していく「LOCONECT」の活動もスタートさせた。第2回「オンライン全国移住フェア」は2020年10月4日に開催予定