リモートワークが拡大するなど働き方が変化し、住まいへの関心は一気に高まりました。一方、どこに住むのか、買うのか借りるのか、地方の実家の空き家問題はどうするのかなど、40~50代のARIA世代特有の「住まい」の悩みは尽きません。唯一の正解はないこのテーマについて、自分なりの答えを見つけた経験者や識者とともに掘り下げます。

 新型コロナウイルス禍を機に多くの人が暮らし方や働き方を見つめ直し、特に首都圏で生活している人を中心に「住まいをどうするか」への関心が高まっています。都心部ではマンション価格が記録的な高騰を続ける一方で、郊外や地方に実家がある人にとっては、親の家をどうするかも大きなテーマに。そんな中、ミドル世代が自分の理想の住まいを手に入れるために大切なこととは何か。住まいの専門家2人に聞きました。

自分の住まい以上に気がかりな、「親の家問題」

 「住まいのことで今一番大変なのは、実は40~50代の方の親世代。ニュータウンなどかなり郊外に大きな一戸建てを買っているケースが多く、年齢と共に維持が大変になっています。また、宅地開発によって発展してきた私鉄沿線の分譲地は区画の面積が広く、そこに暮らす70代が家を持て余しているという話も本当によく聞きます」。不動産総合ポータルサイト「SUUMO」副編集長の笠松美香さんはまず、ミドルの家問題の特性として「親の不動産にしばられる世代なのではないか」と指摘します。

 「『もう少し便利な場所でマンションに住み替えてコンパクトに暮らしたら?』と親御さんに勧める方は多いですが、親は長年の人間関係ができているので、別の場所へ移るのは気が進まないんですよね。難しい問題ですが、そうやって親が元気なうちに働きかけをするのはすごく大事なこと。この先近くで暮らしをサポートする必要が出てきたり、家の維持を託されたりといったことで自分たちの住まいの選択肢も変わってくる可能性があるので、実家をどうしていくかは親子で早めに話し合ったほうがいいと思います」(笠松さん)

 都市部で働くミドル世代自身の住まいということでは、コロナ禍で広く関心が高まったのが二拠点居住。SUUMOが2021年1月に行った「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」の年代別の結果では、40代、50代とも1位は鎌倉・三浦エリア(神奈川県)、2位は東京の八王子・奥多摩エリア(東京都)でした。

 「二拠点居住は都心から1時間半以内で行ける場所が好まれる傾向がありますが、背景の一つとして、コロナ禍で海外を取材していたテレビ番組などが、関東圏を中心に近場の自然環境豊かなスポットを取り上げるようになった影響はあると思います」と笠松さん。不動産情報に詳しい東京情報堂の中川寛子さんも、「コロナ禍以降、首都圏から1時間~1時間半圏内のリゾート物件がよく動いている。仕事や子どもの学校のことなどを考えると、現実的に目が向くのは近場でゆったり過ごせる場所ということなのでしょう」と話します。

―― 次ページからは、シングルのマンション購入事情や、ミドル世代が理想の住まいを見つけるための具体的なヒントを探っていきます。

人生後半、自分に合った暮らし方を見つけるために大切なこととは?
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