リモートワークが拡大するなど働き方が変化し、住まいへの関心は一気に高まりました。一方、どこに住むのか、買うのか借りるのか、地方の実家の空き家問題はどうするのかなど、40~50代のARIA世代特有の「住まい」の悩みは尽きません。唯一の正解はないこのテーマについて、自分なりの答えを見つけた経験者や識者とともに掘り下げます。

 人生後半のスタート地点に立つ40~50代のARIA世代だからこそ迷いが出る「人生後半の住まい問題」。子どもが巣立ったり、パートナーと別れたり、はたまた新しいパートナーと出会ったり、まだまだ変化が訪れる年齢だからこそ「賃貸にすべきか、購入すべきか」悩む人もいるでしょう。

 人生後半の住まいの選択、一体何が正解なのでしょうか? ARIA世代のベテランFP(ファイナンシャルプランナー)で、多くの人のお金や住まいの相談に乗ってきた和泉昭子さんと深田晶恵さんに、自身はどんな未来を想像してどんな選択をしているのか聞いてみました。

半年前に母をみとり、老いて独りで暮らす大変さに気づいた

編集部(以下、略) 多くの人にお金や住まいを含めたライフプランについてアドバイスしてきた和泉さん自身は、人生の後半の住まいをどうする予定ですか?

和泉昭子さん(以下、和泉) 実は今、毎晩アレルギーが出てしまうくらい家のことで悩んでいるんです……。というのも、今は神奈川県藤沢市で母と姉と私の共同名義で所有していたマンションに住んでいるのですが、そこに移り住んだのは母を介護するため。東京・白金に持っていたマンションを売って、引っ越しました。そして2021年末に母をみとり、今は独り住まい。周囲に知り合いもいないので孤独なんです。

和泉昭子
和泉昭子
いずみ・あきこ/生活経済ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー、人財開発コンサルタント。1961年、東京生まれ。元フリーキャスター。2021年末に同居介護していた母をみとり、現在は神奈川県藤沢市のマンション(母と姉と和泉さんの共同名義)に1人で居住

和泉 私は30代半ばで東京・用賀の2LDK、そして40代半ばで白金の2LDKとマンションを買い替えてきた「購入派」。ずっと東京暮らしだったので、友人たちもみんな東京にいるんですよ。母がいなくなった今、寂しくて早く都心に戻りたいのですが、不動産が高騰してとてもじゃないけど買えない。新型コロナウイルス禍、ウクライナ戦争、インフレ、円安などのさまざまな要素が重なり、不動産がすごく高くなっているじゃないですか。

―― 都心の賃貸に住むという選択肢はないのですか?

和泉 私の場合はないですね。自営業で公的年金が少ないため、将来は自宅を売るか貸すかして、老人ホームに入る計画を立てているので。母の介護を通して、老いてから独りで暮らしていくことはこんなにも大変なんだって気づいてしまったんですよね。