リモートワークが拡大するなど働き方が変化し、住まいへの関心は一気に高まりました。一方、どこに住むのか、買うのか借りるのか、地方の実家の空き家問題はどうするのかなど、40~50代のARIA世代特有の「住まい」の悩みは尽きません。唯一の正解はないこのテーマについて、自分なりの答えを見つけた経験者や識者とともに掘り下げます。

賃貸派の私が「購入」にシフトした訳

 「シングルの女性が家を購入」というと、多くの人がマンションを思い浮かべるのではないでしょうか。まさか一軒家を購入するなんて、想像がつかないかもしれません。

 「自分は一生賃貸に住むだろう」と思っていたという文筆家のツレヅレハナコさんもその1人でした。しかし、ある人との出会いで突然マイホームを持つことに。しかも都心に一軒家、それも建て売りの中古物件ではなく、更地に一から家を建てたというから驚きです。

 ツレヅレハナコさんは、一人暮らし(+猫一匹)。「今後も誰かと一緒に住むつもりはない」と言います。それでもなぜ、マンションではなく家を建てることにしたのでしょうか。

2020年に完成したツレヅレハナコさんの一軒家の2階にあるリビングダイニング。「ホームパーティーが好きなのでダイニングテーブルは大きなものに。東北地方の材木屋まで行き、一生ものの一枚板を選びました」(ツレヅレハナコさん)
2020年に完成したツレヅレハナコさんの一軒家の2階にあるリビングダイニング。「ホームパーティーが好きなのでダイニングテーブルは大きなものに。東北地方の材木屋まで行き、一生ものの一枚板を選びました」(ツレヅレハナコさん)
ツレヅレハナコ
ツレヅレハナコ 文筆家。1976年、東京都生まれ。出版社の料理雑誌編集部を経て独立。食情報を紹介するInstagramのフォロワーは6万人超。雑誌やWEBメディア、料理講座、調理器具開発など多岐にわたり活躍中。『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)、『ツレヅレハナコの愛してやまないたまご料理』(サンマーク出版)、『まいにち酒ごはん日記』(幻冬舎)など著書多数

 「2018年ごろ、建築家の坪谷和彦さんと仕事で出会ったのがきっかけです。何度もお会いするうちに、プライベートなことを話すほど親しくなり、あるとき私が払い続けていた高額な自宅マンションの賃料の話になりました。その金額を伝えた途端、坪谷さんの目の色がパッと変わり、その場で電卓をたたき始めたんです。

 そして、『その金額を30年間払い続けたらこの金額になりますよ。もう家が買える額じゃないですか』って言われたんです。その金額の大きなこと。

 結局、家を建てた後の毎月のローン返済額は、以前支払っていた賃料の半分以下になりました」