会社の看板の下で仕事をしている毎日にも、いつか終わりがやってきます。組織を離れたあとも、何か仕事を通じて社会と関わっていきたいと考えているなら、自分にできることや自分の強みを棚卸しして、分かりやすく伝えることが必要になります。定年前に会社を離れて現在は個人として活躍する4人に、「自分ブランド」をどう築いたのか、詳しく聞きました。

 約20年間務めた電通を2020年末に退社した水野和佳さん。「やりがいを感じる仕事でしたが、10年間は“辞める辞める詐欺”状態でした」と振り返る。そんな水野さんが無意識に積み上げていた自分の強みに気づくことができた理由、いつか独立する日のために「ギブ&ギブ」で行っていたこととは?

「自分の強み」のヒントをくれたのは、意外な人だった

編集部(以下、略) 先ほどもらった名刺には、縦横上下に「Coordinator」「Producer」「Connector」「Planner」の4つの文字が刷られています。Connectorというのは耳慣れない肩書です。

水野和佳さん(以下、敬称略) 会社を辞める2年前、部署異動のときにもらった寄せ書きの色紙に、「水野さんのような人のことをコネクターと呼ぶらしいですよ」という一文がありました。書いてくださった先輩とはそれほど交流がなく、私のどんな面を見てくれていたのかは分かりません。

 新卒から20年以上勤めた電通では、大手ゲームメーカーのPRやクリエーティブ、大手製薬会社のスキンケア化粧品のブランディング、そして東京本社で社内の業務改革に取り組む仕事をしていたのですが、確かに人と人とを「つなぐ」役割は得意とするところ。振り返れば、それが私のライフワークでした。これは私の強みの一つだな、と色紙を見て気付いたんです。

 世の中にはすごい才能を持つ人が大勢います。そして、それぞれの得意なものを掛け合わせることで、さらに素晴らしいものが生まれる。「こういう人を探しているんだけど」と聞かれたとき「この人がぴったり!」とひらめき、間に立ってつなげることで、極上のマッチングが生まれる。そんな瞬間を見るのは大きな喜びです。名付けてもらったことで「私はコネクターなんだ」と自覚し、自信も生まれました。

―― あまり交流のない人からの指摘で、自分の強みに気付いたんですね。

水野 自分でもびっくりしました(笑)。それ以降、日々、「自分はコネクター」だと思って、仕事も仕事以外の活動もしていました。その際は「ギブ&テイク」でなく「ギブ&ギブ」です。いつか何かの形で返ってくるかもしれないし、こないかもしれない。でもいいんです。私に何が求められているのだろう? と考えて、「こういう人知らない?」と聞かれれば惜しみなく情報を提供する。

 そうそう、私、小学校以来の同級生とはずっとつながっているんですよ。同窓会や会社の同期会の幹事にも立候補しています。幹事の役割を担うことによって、出席する人だけでなく、できない人とも交流をすることができますから。

―― 電通が立ち上げた「ニューホライズンコレクティブ(New Horizon Collective)合同会社」(以下NH社)と業務委託契約を結んで個人事業主となった理由は?

今力を入れているのは保護犬猫活動。活動を始めてまだ1年足らずだが、現在は9匹の猫を一時預かりしている。「この活動から新しいつながりが生まれ、人の輪もどんどん広がっています」
今力を入れているのは保護犬猫活動。活動を始めてまだ1年足らずだが、現在は9匹の猫を一時預かりしている。「この活動から新しいつながりが生まれ、人の輪もどんどん広がっています」