「投資? そんな時間ないし、絶対に元本割れしたくない!」「やっぱり銀行預金が一番安全でしょ!」。胸を張って貯蓄一筋40ウン年できた日経ARIAの細腕記者2人が、お金の達人と丁々発止の5番勝負!「本当に投資は必要なんですか?」「長期投資すれば必ずもうかるって過去の話でしょ?」――素人質問を迎え撃つ達人たちの答えは? そして、記者たちはどう動く? 実録です!

投資ド素人の記者I 胸を張って言いますが、私と記者Oの資産は「貯蓄10:投資0」。ARIA世代のアンケート結果(※)でも4人に1人がそうでした。私の場合は、全財産が給与天引きの財形貯蓄です。でも、いろいろ検討してそうしているわけではなく、正直なところ「考えるのも始めるのも面倒だし、元本割れだけはぜーったいに嫌だから貯蓄かな」という程度。でも、「投資でもうかって70万円のソファ買った」とかいう友人の話を聞くと、正直、うらやましいな、と心がざわつきます。

「元本割れ」とは無縁の人生を歩みたい!

野尻哲史さん(以下、敬称略) いきなりですけど、今日は相当マーケットが下がっていますよ。

記者I それがもう、嫌なんです! そういう余計な心配を背負ってなんで投資しなくちゃいけないの? って思ってしまう。投資をしていないからマーケットに一喜一憂しなくて済む、っていう小さな優越感すら持っているわけなんですが。

野尻 私の基本的な考え方は「投資はしないに越したことはない」です。

記者O え? 投資をお勧めしないんですか?

野尻 しなくて済むなら、の話です。だけど今や女性は5人に1人の確率で96歳まで生きるんです。心がざわつかないですか。

記者I ちょっとざわつきます。そもそも、そんなに長生きしたくないですし、長生きするだけのお金がありません。

野尻 では、次の2つの心のざわつき。どちらを許容できますか。

 「元本割れが嫌だから投資が怖い」というざわつきと「96歳まで生きるかもしれない、最後の5年分のお金がなくなるかもしれない」というざわつき。「予定では90歳で死ぬつもりでした、でもそのときになってまだあと何年生きるか分からない」ってなったときの「お金の足りなさ」に対するざわつきです。

女性の20%は96歳まで生きる時代が来てしまった!

 言葉を変えると「投資するリスク」と「しないリスク」。これをてんびんにかけなきゃいけないわけですよ。Iさんは、投資をせず貯蓄にすべての財産をつぎ込んでいる事態を招いているわけじゃないですか。「それでもいい」と思っているんでしたら、そのままでいいんですよ。もう一度言いますが、投資しなくてよければそれに越したことはない。ただ、96歳まで生きるとなると、どう計算しても老後資金として1億数千万円は必要になってきますよ。

記者I えっ! このまま貯蓄だけだと老後資金1億数千万円に届かないことは目に見えているんですけど……。

野尻 おっと。焦らせてすみません。1億数千万のうちの6割ぐらいは公的年金でまかなえるとして、残りの5千数百万円が自分で用意するお金という考え方です。何とかコントロールしながら使ったとしても、寿命が延びた最後の5年間「まるっきり資産がなくて公的年金だけです」っていうのをどうやって自分の中で許容するのか。しかも、「投資するリスク」には軽減策があるんです。