あらゆる生活のスタイルと世の中の常識が激変したコロナ禍。感染再燃への不安を抱えながら、未経験の「新しい生活様式」への対応で、目に見えないストレスと疲れは思った以上に蓄積しています。長いステイホームと、自粛明けの環境変化からくる心身の変調を見逃さないで。ポストコロナの日常の中で、心と体をリフトアップする新習慣を紹介します。

 新型コロナで世界は大きく変わりました。見えない不安と共存して生きる新しい生活の中で、どうすれば心豊かで幸せな精神状態を得られるのか。欧米の大学における、科学的知見に基づいたサイエンス・オブ・ハピネス(幸せについての科学)を長年ウオッチしている悠木そのまさんに、コロナ禍での動きや、今実践できる幸せになるための行動について聞きました。

コロナ禍で起こる分断や差別や偏見を、研究者は警告していた

 人はいかに幸せになることができるのか。米ハーバード大学やカリフォルニア大学バークレー校など世界の多くの大学で、心理学をはじめとする社会科学の見地から研究されている領域がサイエンス・オブ・ハピネスです。新型コロナの感染拡大によって、ウィズコロナという新たな不安を抱えた時代へ移行するにあたり、幸せに生きるには何が必要なのか。サイエンス・オブ・ハピネスの研究を長年追い続けてきた私は、今回のコロナ禍での動きを、大きな関心を持って注視してきました。

 というのも、世界中で感染が拡大し始めた2020年2月ごろから、サイエンス・オブ・ハピネスの研究者たちはすでに数多くのメッセージを発信していました。中でも、米国のミネアポリスで黒人男性が警察官に首を押さえつけられ死亡した事件に端を発した、人種差別への抗議のムーブメントを予見するような記事が2019年のうちから発信されていたのには驚きました。

 人間は生命が脅かされると、危険と思われる人や考えを遠ざける傾向があります。生き延びるために、もしかしたらウイルスを持っているかもしれないと感じる人を遠ざけるのは、人の防御システムが正しく働いているともいえます。このような反応を「文化的検疫」と呼びます。

 文化的検疫の副作用として、偏見による反目や差別や分断といった動きが広がるだろうと研究者たちは予測していたのです。日本でも医療従事者の家族を差別するということが実際に起こりましたね。

 サイエンス・オブ・ハピネスの研究者たちは、このように考え方の違いや肌の色の違いなどで人々が分断され、反目し合うと、社会が脆弱(ぜいじゃく)になると考えています。ですから、どうすれば皆が協力的になれるか、社会が1つのチームになってコロナ禍に立ち向かえるか、という提言を積極的に発信しているのです。それらは実践的なものが多く、日常に取り入れることで、ウィズコロナの不安な時代に役立ちます。

 何より、幸せな人は健康で免疫力が高く長生きであることは、過去の研究から明らかにされています。幸せな状態でいることは、ウィズコロナ時代を生きるあらゆる人にとって重要なことといえます。