ポストコロナをしなやかに生きるために必要なスキルの一つは、レジリエンスです。近年、急速に注目を集める概念で、想定外の困難や大きな失敗に直面しても「普段の心の機能を維持させる役目」を意味します。では、どうすれば私たちはレジリエンスを鍛えることができるでしょうか。専門家や、あまたの困難を乗り越えてきた百戦錬磨の経営者たちから学びます。

レジリエンスは鍛えることができる

 今、うまくいかない状態、停滞している状態を「自分は駄目な人間だ……」と後ろ向きに捉えるか、「今は未来に挑戦するための準備期間だ!」と前向きに捉えるかは、私たち自身が決めること。あなたはどちらのタイプでしょうか。

 最近、耳にすることが増えてきた「レジリエンス」とは、後者のように捉えることができるように自分を変えていくことです。「レジリエンスとは、思考と行動の過程を変化させることにより、できるだけ前向きに挑戦できる習慣を身に付ける力です。日本では、『逆境力』や『心の回復力』などと表現されることが多いようですが、心理学的には少し違います」と話すのは、2012年からラグビーW杯2015が終わるまでエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチの下で、ラグビー日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織さん。現在はアジア南太平洋スポーツ心理学会副会長などを務めています。

 荒木さんによれば、レジリエンスの研究が進んだのは2010年ごろから。スポーツのトレーニングに応用できると分かったのは2016年ごろだそう。「このままでは良い結果にならないと感じる環境で、自分自身を守る役割をレジリエンスが担います。特別に困難な状況にだけ必要なのではなく、普段のちょっとした出来事に対しても、レジリエンスがあれば助けになります。レジリエンスとは心の機能を強化する能力ではなく、あくまでその人が持ち合わせている『普段の心の機能を維持させる役目』なのです」と荒木さん。

 「レジリエンスは鍛えることができる」と荒木さんは言います。では、今コロナ禍にある私たちに有効なレジリエンスの鍛え方には、どんなものがあるのでしょうか。荒木さんに5つの方法を聞きました。

レジリエンスを鍛える5つの方法 1人生を長い目で見る、2できたこと、よかったことを確認する、3成し遂げたいことに注意を向ける、4楽観的に物事をとらえることを選択する、5グレーゾーンを受け入れる
複数あるレジリエンスの鍛え方のうち、ARIA世代に、そして今の時代に適した鍛え方を5つ厳選して聞きました。詳細をこれから解説します

 コロナ禍の今、私が最も有効なレジリエンスだと考えるのは、「人生を長い目で見る」ことです。経済の先行きが見通せない、これまでと同じように働き続けられるか分からない、子育てをしながらの在宅勤務が大変……今、いろいろな不安を抱えている人は多いはずです。一方で、せっかくキャリアが軌道に乗ってきたタイミングなのにこんな大問題が……という人もいるかもしれません。

 ここで大切なのは、焦らずに、人生を長い目で見るという「選択をする」ことです。

人生を短距離走ではなく、長距離走だと考えれば…
人生を短距離走ではなく、長距離走だと考えれば…