ポストコロナをしなやかに生きるために必要なスキルの一つは、レジリエンスです。近年、急速に注目を集める概念で、想定外の困難や大きな失敗に直面しても「普段の心の機能を維持させる役目」を意味します。では、どうすれば私たちはレジリエンスを鍛えることができるでしょうか。専門家や、あまたの困難を乗り越えてきた百戦錬磨の経営者たちから学びます。

 ジャパネットたかた創業者で、サッカーチーム「V・ファーレン長崎」の経営にも携わってきた高田明さん。約40年間の経営者人生で数々の試練を乗り越え、事業を成長させてきた高田さんの折れない心とは? 高田流レジリエンスの高め方を聞きました。

高田 明(たかた・あきら)ジャパネットたかた創業者
高田 明(たかた・あきら)ジャパネットたかた創業者
1948年生まれ。71年、大阪経済大学経済学部卒業後、阪村機械製作所に入社し通訳として海外駐在を経験。74年、父親が経営するカメラ店で働く。86年に独立し、「たかた」(現ジャパネットたかた)を設立。94年にはテレビ通販に進出。売上高1700億円を超える企業に成長。2015年、社長を退任と同時にA and Liveを設立。17年4月から約3年間、サッカーJ2(当時)のクラブチーム、V・ファーレン長崎の社長を務め、J1昇格に貢献した

 私はジャパネットの経営に長い間携わってきましたが、決して順風満帆だったわけではありません。山あり谷あり、大変な時期も経験しました。

 創業当時、長崎県佐世保市の写真店だった時代は、記念写真の撮影とプリントに忙しくて1日の睡眠時間が2、3時間という日が続き、過労がたたって急性肝炎で入院しました。また、年商の3分の1を占める大口顧客から突然契約を打ち切られたこともあります。

 90年代にテレビ通販が軌道に乗り、2001年、20億円を投じて収録用の自社スタジオを建設する際は、周りに猛反対されました。「一人も技術者がいないのに無謀」と言われて、成功すると思った人はいませんでした。

2011年から売り上げ急落。取った対策は…

 04年には個人情報の流出問題が発生。2カ月もの間、休業しました(詳細は「今こそ、リーダーに求められる『伝える力』 高田 明」)。そして11年、最大の危機が訪れます。地上アナログ放送の終了と、政府が推進してきた「家電エコポイント」の終了に伴い、それまで売り上げをけん引していたテレビが全く売れなくなり、かつてない大幅な売り上げ減を経験したのです。

 ジャパネットは10年に、地上デジタル放送対応テレビの駆け込み需要も手伝い、売り上げ1759億円、経常利益136億円と過去最高益を記録しました。しかし、それをピークに需要が急減。わずか2年で売り上げが600億円も落ち込み、経常利益は136億円から73億円まで減りました。

高田明さんのレジリエンス3カ条。1)トップは逆境で覚悟を決める。動揺していたら部下に伝わる。2)一生懸命やったら失敗ではない。うまくいかなかったら試練と思う。3)自分ではどうにもできない、過去や未来にとらわれない