目の前の仕事やプライベートのあれこれに忙しくて、人生のこれからを考える余裕なんてない。40~50代はそんな状態のままで過ごしてしまいがちな年代です。でも、自分の未来は自分でつくるもの。忙しさを言い訳にせず、自分を見つめ直す時間の「枠取り」をして、80歳まで現役で生きられるような成長戦略を描きませんか。人生の折り返し地点で「キャリアの夏休み」を取得した人たちに話を聞きました。

有名企業が取り入れだした長期休暇制度

 自らの働き方を見直す機会になる長期休暇を制度として導入する企業が少しずつ増えています。2010年代からヤフー、ソニーなど有名企業が取り入れ始め、21年には全日本空輸(ANA)が最長2年間取得できるサバティカル休暇制度を導入して話題になりました。それぞれ名称は違うものの、長期休暇の取得を認めています。

 「サバティカル休暇のおかげで、自分をリセットできた」と話すのはヤフーPD統括本部オフィス・経営支援本部業務運用支援部の柴田絵里さん。18年、3カ月間の休暇を取得し、ガラパゴス諸島で環境ボランティアに参加しました。

 柴田さんがサバティカル休暇を取得したいと考え始めたのは、40歳になるタイミング。「勤続10年を迎え、一度リセットして働き方を見直したいと思っていた時期でした。長く仕事をしていると、どうしても自分にひも付く属人的な仕事が増えてきて、その仕事は自分でなければできないと執着している自分もいた。それを一度、引き剥がしたいと思って。休暇制度が何かのいいきっかけになればと考えました」。とはいえ、その時点では具体的にどこで何をするかは決まっていませんでした。

「好きなことを仕事にできなかった」というモヤモヤ

 もう1つ、柴田さんにはキャリアの始まりから抱えていたモヤモヤがあったといいます。「大学時代に米国で環境学を学んでいたので、卒業後は現地で環境関係の仕事に就きたいと考えていました。でも、卒業の年に同時多発テロがあり、米国での就職はかなわなかった」。帰国後は音楽事務所に就職し、IT関連の企業を経て、ヤフーに入社し、主に管理部門で仕事をしてきました。「仕事に不満はなく、常に全力で取り組んできましたが、好きなことを仕事にできなかったという思いはずっと根底にありました

 海外に短期留学して学び直そうかと考えていたとき、ガラパゴス諸島でのボランティア活動参加者の募集を発見し、「やりたかったのはこれだ!」と直感。上司に伝えると、「ガラパゴス?!」と驚かれはしたものの、休暇中の業務引き継ぎなどはトラブルなく進みました。

ゾウガメの餌を運ぶ柴田絵里さん。陸地から1000キロ以上離れた太平洋の沖に浮かぶエクアドル領ガラパゴス諸島で環境保護活動に参加した
ゾウガメの餌を運ぶ柴田絵里さん。陸地から1000キロ以上離れた太平洋の沖に浮かぶエクアドル領ガラパゴス諸島で環境保護活動に参加した