がん検診や人間ドック…「必要な検診」をちゃんと受けていますか? 更年期前後でやっておくべきことは? 30年前に虫歯治療した歯はそのままでOK? 美容の知られざる最新情報は? かつての「常識」が今も通用するとは限りません。ARIA世代を取り巻く健康情報の新常識をお届けします。

 「ARIA世代はぜひ一度、ご自身の骨密度を測ってほしい」というのは、よしかた産婦人科院長の善方裕美さん。更年期といえば女性ホルモン、と思いがちだが、実は骨密度は閉経後にガクンと下がり、「骨粗しょう症」リスクが高くなるのだ。特に痩せ型の人や、最近身長が縮んだという人は注意して。今回は、ARIA世代が知っておきたい骨密度の話をお伝えする。

失って初めて重要性に気づく「骨密度」

 ARIA世代なら、閉経前後に女性ホルモン値が急降下し、のぼせやイライラ、冷えなどの更年期障害が起こりやすいことは既にご存じだろう。でも、私たちが普段は気にしていないけれど、測定しておきたい数値がある。それが「骨密度」だ。

 「骨は体を支える組織だから強くて当たり前、と思っている人が多いのですが、閉経後に女性の骨密度は、女性ホルモンと同じように急激に低下するのです。そうなる前に、『私、閉経が近づいているかも』というタイミングでぜひとも骨密度を測ってほしい」と、骨粗しょう症の研究を重ねる善方さんは言う。

 骨密度は、そのピーク時を「YAM=Young Adult Mean(若年成人平均値)」といい、これを100%として、70~80%未満になると「骨減少症」、70%未満になると「骨粗しょう症」と診断される。20~30代が骨密度のピークだが、40代から減少し始め、閉経を迎える50歳ごろから急激に減少、骨粗しょう症の発症率が増えていく(グラフ参照)。

更年期には急激に骨量が減少する
更年期には急激に骨量が減少する

 「骨密度が低下することによる骨粗しょう症は、骨の強度が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨粗しょう症の怖いところは、全く自覚症状のないまま進行し、ごく軽い転倒などでも骨折を起こすこと。更年期障害の症状は、のぼせやほてり、疲れやすさや抑うつ感、関節痛など、“感じやすい”ものであるのに対して、骨粗しょう症は無症状で進行するのです」(善方先生)

 骨折が起こりやすいのは、背骨、手首、股関節など。中でも、痛みがないままに背骨が骨折することが多い(「いつのまにか骨折」と言われる)のが特徴。

 「この骨折を甘く見てはいけません」と善方さん。骨密度の低い55歳から81歳の6459人を約3年間追跡した研究では、低骨密度で背骨に変形がある女性の死亡リスクは1.6倍にものぼったことが分かっているのだ(※1)。

 「高齢になり、骨密度が低下した状態で骨折すると、若いときのけがによる骨折と違い、なかなか治りません。再び骨折することが多くなり、転倒して寝たきりになったり認知症を発症したりするリスクも一気に高まります。また、背骨は内臓の位置を適正に保つ支柱の役割も果たしているので、背骨が折れると内臓が圧迫され、逆流性食道炎や不整脈などの病気にもかかりやすくなってしまいます。とにかく骨折する前の予防が大事。そのために測るべきなのが骨密度なのです」(善方さん)

 骨は見た目にも影響する。背骨が骨折する「脊椎(せきつい)圧迫骨折」を起こすと背骨が曲がり、老け込んだ印象になってしまう。生涯、元気に美しくいたい、というときに骨密度は忘れてはならない重要な要素なのだ。

※ 1J Am Geriatr Soc. 2000 Mar;48(3):241-9
骨粗しょう症は無症状で進行してしまう
骨粗しょう症は無症状で進行してしまう