がん検診や人間ドック…「必要な検診」をちゃんと受けていますか? 更年期前後でやっておくべきことは? 30年前に虫歯治療した歯はそのままでOK? 美容の知られざる最新情報は? かつての「常識」が今も通用するとは限りません。ARIA世代を取り巻く健康情報の新常識をお届けします。

 「歯周病」や「虫歯」に気を付けていても歯を失うことはある。失った歯の治療を先延ばしにていると、思わぬリスクがあるという。いざというときのために義歯の最新知識を知っておこう。現在は技術の進んだインプラントも選択肢の一つになる。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野教授の水口俊介さんに聞いた。

歯を失ったまま放置すると思わぬリスクが…

 「歯を失ったら、すぐに補うよう、手当てするべきです」と水口さんは強調する。歯には、周囲にスペースが空くとすぐにその隙間を埋めようとする性質がある。「隙間を埋めようとして、隣の歯が倒れて斜めになったり、抜けた歯とかみ合わさっていた上あるいは下の歯が伸びたりすることもあります。また、1本の歯が動くと、さらに周囲の歯も動いて、新たにできた隙間に歯垢(しこう)がたまりやすくもなります。その結果、虫歯や歯周病が悪化し、別の歯をさらに失うリスクもあるのです」(水口さん)。

 それでも義歯になると、かむ力が弱くなったり、食べ物の味や温度、食感を感じにくくなるなど、QOL(生活の質)が一気に低下してしまうのではないか、と心配な人も多いだろう。

 「健康な歯には、歯と骨の間でクッションの役割をする『歯根膜』というとても優れた組織が存在し、かむ力を支え、かむことによる衝撃を受け止めています。歯が1カ所抜けるとその部分の歯根膜がなくなるので、周囲の歯がそれを補おうとしてかむ力の負担が偏ったり、その負担が刺激になって歯周病が進行しやすくなります。しかし義歯を装着して十分に調整し、きちんとプラークコントロールすることによって、口の機能を高めQOLの低下を防ぐことが可能なのです」と水口さん。

義歯になると、かむ力が弱くなったり、QOL(生活の質)が低下するのではと心配になるが…
義歯になると、かむ力が弱くなったり、QOL(生活の質)が低下するのではと心配になるが…

 かぶせものや義歯で補う補綴(ほてつ)治療の素材は多様化し、その形もコンピューターを取り入れて設計するなど、驚くべき進化をしている。「義歯はきっちりと作ることができれば、QOLはあまり変わらない、という報告も多くあります。総入れ歯でもビーフジャーキーをかめる、という人は私の患者さんでもたくさんいらっしゃいますよ」(水口さん)

 義歯を入れる場合、おもに「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」という3つの選択肢がある。どう選べばいいのだろうか。