がん検診や人間ドック…「必要な検診」をちゃんと受けていますか? 更年期前後でやっておくべきことは? 30年前に虫歯治療した歯はそのままでOK? 美容の知られざる最新情報は? かつての「常識」が今も通用するとは限りません。ARIA世代を取り巻く健康情報の新常識をお届けします。

 日本人の2人に1人が、一生のうちに一度はがんにかかるといわれている。がんは日本人の死因の不動の第1位を占めており、できることなら避けて通りたいと思う人は多いだろう。だが幸いにも、医学の進歩のおかげで、今は早期発見・早期治療をすれば完治させられるがんが増えてきた。

 重要になってくるのが、いかにがんを早く見つけるかだ。多くのがんは、自覚症状が出てから発見されても、その時点でかなりステージ(がんの進展の段階)が進んでしまっており、早期に発見した場合と比べると生存率は落ちてしまう。早期発見のためには、自覚症状がない段階でさまざまな“網”を投げ、体の中に潜むがんを見つけ出す必要がある。

 そこで、がん検診の実情に詳しい近藤しんたろうクリニック院長の近藤慎太郎さんに、日本人女性の部位別死亡数で上位5つのがん(下表参照)を早期発見するために知っておくべきことを聞き、2回にわたってお届けする。前編となる今回は、日本人女性のがん死亡数上位3位の大腸、肺、膵臓(すいぞう)について聞いた。

厚生労働省「2018年人口動態統計」より
厚生労働省「2018年人口動態統計」より

便潜血検査の精度を高めるコツは?

日本人女性のがん死亡数1位/大腸がんのQA
Q 便潜血検査って本当に大腸がんの早期発見に役立っているの?
A 早期発見には向いていないので、回数をしっかり受けることで精度を高めましょう

 大腸がん検診の便潜血検査は、便に血液が混じっていないかを調べる検査だ。大腸にがんやポリープがあると、便が通るときにこすれて出血する可能性がある。それが起こっているかどうかを調べるのだ。がんがあるかどうかを直接見るわけではなく、痔(じ)などのために便に血液が混じることもあるので、大腸がんの発見精度はあまり高くない。

 「大腸がんがあっても便潜血検査が陰性で、すり抜けてしまう人はけっこういます。小さいポリープの段階では出血もしにくいので、便潜血検査はがんを早期発見しやすいとは言えません。報告によってばらつきがありますが、大腸がんを1回の便潜血検査で拾い上げる可能性は30~56%、2~3回繰り返してやっと84%といわれています」と近藤さんは話す。

 しかし、便潜血検査に大腸がんの死亡率を下げる効果があることははっきりしている。また、体に針を刺したり口から管を入れたりする必要がなく、自然に出る便を提出するだけの簡便な検査なので、利用しない手はない。精度の低い検査で有効性を高めるには、回数を多くすることが重要だ。通常は1回の検査で2日分の便を提出することになっているので、きちんと2日分を提出しよう。そして、1回だけでも陽性になったら、すぐに精密検査を受けよう。

 「1回だけだから何かの間違いだろう、次回の検査まで様子を見よう、と精密検査を受けないのでは、便潜血検査を受ける意味がありません。便潜血検査が陽性になったら、人間ドックでは自費で2、3万円もする大腸内視鏡検査を保険で受けられます。絶好のチャンスと考えて、ぜひ精密検査を受けてください」(近藤さん)

便潜血検査に大腸がんの死亡率を下げる効果があることは、はっきりしている(写真はイメージ)
便潜血検査に大腸がんの死亡率を下げる効果があることは、はっきりしている(写真はイメージ)