仕事人生以外の人生を豊かにしてくれるのは、自分が持っているコミュニティです。会社を卒業したら毎日何をする? 将来、誰かの助けが必要になったら? 災害時の備えは? 頼れるのは遠くの親戚より近くの他人。40代から地元にコミュニティを築く方法を考えます。

 「社会構造と共にコミュニティのあり方も変化して当然。これからはコミュニティに『所属する』のではなく『接続する』という発想で行動すれば、不安や孤独を感じることもなくなります」。こう話すのは、独身研究家でコラムニストの荒川和久さんです。未婚化、少子化が進み、2040年には一人暮らしが世帯全体の4割を占めると推測されている日本において、心豊かに生きていくために知っておくべき新しいコミュニティの考え方について聞きました。

住む場所と「安心のコミュニティ」は必ずしも同一ではない

編集部(以下、略) 地域のコミュニティを大切にしませんか?という趣旨の今回の特集ですが、そうは言いつつ実際のところ、都心のマンションに一人暮らしをしていたり、結婚しても子どもがいなかったりすると、「地域って言われても、ねえ……」という人もいると思います。

荒川和久さん(以下、荒川) 人口全体に占める単身世帯の割合がどんどん増えていく中、社会が「個人化」するのはこの先不可避だと思います。それは同時に、コミュニティが変容していくことも意味しています。

 かつての地域コミュニティは、まさに「ゆりかごから墓場まで」面倒を見てくれる存在でした。生まれた土地で成長して大人になり、仕事をして結婚して子育てする。近くに住む者同士で助け合って生きていくのが当たり前で、やがて死んだらお葬式も出してくれました。

 高度成長期には多くの会社が独身寮や家族向けの社宅を用意していましたが、これはある意味、昔ながらの地域コミュニティの代替えを職場がやっていたということでもあります。

 でも今は寮も社宅もなくなりつつあるし、都会では隣人についてよく知らないこともめずらしくない。住むところと安心のコミュニティを同一化することがすべてではないのです。例えば、何か困ったことがあって隣近所に駆け込んだって在宅しているとは限らないし、手に持ったスマホで電話をかけたほうが早いですよね。むしろこれだけテクノロジーが進化したら、それに適応した自分なりのセーフティーネットをつくっておく必要があります。

―― 「地域コミュニティに所属しておく」という考え方が、時代に合わなくなっているということでしょうか。

荒川 もちろん、職場や学校への帰属意識は大事ですし、町内会などの地域コミュニティに参加することを否定するものではありません。ただ気を付けたいのが、「ここにさえいれば安心」と思ってしまうこと。それはある意味、所属するコミュニティへの依存につながる可能性があります。