仕事人生以外の人生を豊かにしてくれるのは、自分が持っているコミュニティです。会社を卒業したら毎日何をする? 将来、誰かの助けが必要になったら? 災害時の備えは? 頼れるのは遠くの親戚より近くの他人。40代から地元にコミュニティを築く方法を考えます。

東京・山梨・伊豆にある「3つの私の居場所」

編集部(以下、略) 富永さんは現在、東京、山梨県の富士山麓、静岡県の西伊豆・戸田(へだ)で3拠点生活をされています。多拠点生活をしようと思ったのには、どんなきっかけがあったのでしょうか?

富永美樹さん(以下、富永) 27歳のときにアウトドア好きの夫(ミュージシャンのまことさん)と結婚してからキャンプに行く機会が増え、自然と向き合う時間を重ねてきたことがベースにありますね。私自身は首都圏育ちで東京で就職したので、それまでアウトドアには縁がなかった。文明社会の複雑なシステムや煩雑な人間関係に振り回されてきたけど、自然の中で「食べて寝る」というシンプルな生活をしていると、「生きているだけで十分だ、人生を難しく考えすぎていたのかも……」と思うようになったんです。

 私はどう生きたいのか、どんなことをしたら楽しいのかということを考えるようになって、たどり着いたのが「住む場所」の再考でした。もともと東京にフィットしている感じがなかったんです。隣の芝が青く見えてしまったり、人と比べて気後れしてしまったり、自分を見失うことも多くて。でも自然の中にいると自分がフラットになって、地に足がつく感じがして心地よかったんですよね。そこから私たちの「居場所探しの旅」が始まりました。2012年頃のことです。

富永美樹さん
富永美樹さん
1970年生まれ。フリーアナウンサーとして、『東大王』などのクイズ番組やイベントの司会等で活躍。夫は「シャ乱Q」ドラムスのまことさん。2014年、山梨県の富士山麓にセカンドハウスを建てる。2015年から静岡県沼津市戸田にも家を借り、3拠点生活を送る。発酵マイスターとして著書に『富永美樹の 腸が変われば、病気にならない。』。50歳を機に始めたインスタグラムが好評

―― そこで出合ったのが、山梨県の富士山麓なんですね。なぜそこを選んだのですか?

富永 二人とも東京での仕事を続ける前提だったので、片道2時間くらいで移動できる条件で探しました。長野県の軽井沢とか、栃木県の那須とか、千葉県の房総とかいろいろ訪れては、キャンプ場をベースに候補地を次々に見に行きましたね。ようやく「ここだ!」という場所に巡り合えるまでに2年かかりました(笑)。

富士山麓に建てたセカンドハウス。夫が設計から考え、キッチンを土間にするなど自分たちのこだわりを詰めこんだ。「コロナ禍で仕事がストップしたときは、富士山麓の家で過ごしていました」(富永さん)
富士山麓に建てたセカンドハウス。夫が設計から考え、キッチンを土間にするなど自分たちのこだわりを詰めこんだ。「コロナ禍で仕事がストップしたときは、富士山麓の家で過ごしていました」(富永さん)
富士山麓に建てたセカンドハウス。夫が設計から考え、キッチンを土間にするなど自分たちのこだわりを詰めこんだ。「コロナ禍で仕事がストップしたときは、富士山麓の家で過ごしていました」(富永さん)

富永 富士山麓に決めたのは、まさに直感ですね。同じ森でも、場所によって生えている木も標高の高さも違うので、匂いや空気が全然違うんです。富士山麓は二人とも「ここだ!」と思えました。それから季節ごとに訪れて、1年を通して過ごしていくことができる場所なのかを確信してから、家を建て始めました。

―― 2年かけて見つけた運命的な場所に、こだわりのオーダーメードの家を建てた。そのすぐ翌年に、戸田に3拠点目を作ったのはなぜですか?