何か法律が、ルールが、おかしいと思ったときに、あなたならどうしますか? ――仕方ないとあきらめてしまわずに、社会を変えるための一歩を踏み出した人たちがいます。選択的夫婦別姓を日本で実現させるには? 誰かにつきまとわれる被害を終わらせるには? 同意のない性行為を処罰の対象にするには? 問題を「他人ごと」にしないために、私たちにできることも考えます。

 ついこの間まで、性犯罪に関する法律が明治時代につくられたもののまま運用されていたというのをご存じだろうか。被害の対象が女性のみであったり、親などの監護者が子どもと性交しても、暴行や脅迫が認められなければ処罰の対象にならなかったりするなど、被害の実態にそぐわないものだった。それが2017年、110年ぶりに大幅改正されたのだ。

 性犯罪に関する刑法改正に至った背景には、松島みどり議員、森まさこ議員、上川陽子議員といった歴代の女性法務大臣たちのリーダーシップや、一般社団法人Springの前身となる被害者の人々や団体などの熱心な活動があった。ただ、2017年には改正に至らなかった課題もいくつか残った。(記事参照:「性暴力に苦しむ人を減らしたい 刑法改正に挑む看護師」

 そして2021年5月、改正に至らなかった点も含めて議論が行われた「性犯罪に関する刑事法検討会」の報告書が提出され、今まさに法制審議会への諮問に向けて、法務省において検討が進められているという重要な局面にある。

社会が高い関心を寄せることは犯罪抑止にもつながる

 性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟「ワンツー議連」を立ち上げ、「性犯罪は人権問題だ」と何年も訴え続けてきたのが、現・法務大臣の上川陽子議員だ。この積み残し課題、そして検討会をどのように捉え、今後につなげていこうと考えているのか。この問題に高い関心を寄せる弁護士・菊間千乃さんが上川法務大臣にインタビューした。

2021年6月某日、上川陽子法務大臣が弁護士・菊間千乃さんによる1時間に及ぶインタビューに答えた
2021年6月某日、上川陽子法務大臣が弁護士・菊間千乃さんによる1時間に及ぶインタビューに答えた

菊間千乃さん(以下、菊間) 性犯罪に関する刑法改正については、積極的にマスコミのインタビューを受けて、メッセージを発信されている印象を受けます。

上川陽子法務大臣(以下、上川) この問題については、幅広くさまざまな方に理解していただきたいと思っています。また、性犯罪の当事者である被害者は、必ずしも表に声を出すことができないでいます。そのような方々に対して、一般社団法人Spring代表理事の山本潤さんなどのように「被害に遭ったことを話すことができる人」がいることを伝え、「声を上げて大丈夫」だという信頼感を持ってもらいたいという思いもあります。

 また、被害者の方が声を上げたりマスコミの皆さんが報じたりするということは、社会の関心が高いテーマであるという表れでもありますし、犯罪抑止にもつながると思っています。