何か法律が、ルールが、おかしいと思ったときに、あなたならどうしますか? ――仕方ないとあきらめてしまわずに、社会を変えるための一歩を踏み出した人たちがいます。選択的夫婦別姓を日本で実現させるには? 誰かにつきまとわれる被害を終わらせるには? 同意のない性行為を処罰の対象にするには? 問題を「他人ごと」にしないために、私たちにできることも考えます。

明治時代に作られた刑法が110年ぶりに改正

 2017年、性犯罪に関する刑法が110年ぶりに改正されたのをご存じだろうか。「それまでは明治時代に作られたままのもので運用されてきたんです。被害者は女性、加害者は男性のみだった『強姦罪』が、性別に関わらず被害者、加害者と定義される『強制性交等罪』に変わり、法定刑も3年以上から5年以上に変わりました。被害者が告訴しなくても検察が事件を起訴できるようになり、親などの監護者が18歳未満の子どもに性交したら罪とする監護者性交等罪の設立も大きな変更点です。課題は残ったけれど、活動が実を結び本当にうれしかったです」と話すのは、刑法性犯罪の改正に取り組む一般社団法人Spring代表理事 山本潤さんだ。

一般社団法人Spring代表理事 山本潤さん(中央)。一般社団法人Springのメンバーとともに
一般社団法人Spring代表理事 山本潤さん(中央)。一般社団法人Springのメンバーとともに

 山本さんは13歳の頃から実の父親から性暴力を受けてきた。夜、寝ていると、父が布団に入ってきて体を触るようになったという。家庭崩壊を案じて、母には相談できず、誰にも助けを求められないまま、それは父母が別れる20歳まで続いた。その後、父と離れて暮らすようになっても、うつやトラウマ症状に苦しみ続けた。社会人となり看護師として働き始めるも、その症状がおさまることはなかった。

 2005年くらいから、山本さんは支援者の立場で、子どもや女性への暴力防止研修に参加するようになった。看護師として性暴力被害者支援看護職の研修に参加するようになったときには、「ようやく自分の居場所を見つけたと感じた」という。被害者心理を学び、情報を得ることで少しずつ前を向けるようになり、2010年には顔と実名を出して性被害の実態を伝える活動を始めた。「それまでは被害者であることを隠して活動してきましたが、公表すると伝わる力が違うことを実感しました。言葉に重みが増した気がします」