何か法律が、ルールが、おかしいと思ったときに、あなたならどうしますか? ――仕方ないとあきらめてしまわずに、社会を変えるための一歩を踏み出した人たちがいます。選択的夫婦別姓を日本で実現させるには? 誰かにつきまとわれる被害を終わらせるには? 同意のない性行為を処罰の対象にするには? 問題を「他人ごと」にしないために、私たちにできることも考えます。

 社会を変えようと声を上げた人たちを支援するために設立された、一般社団法人社会調査支援機構チキラボ。評論家の荻上チキさんとタッグを組むことになった若林直子さんは広報の専門家として、ジャーナリストの伊藤詩織さんの訴訟など、これまでさまざまなプロジェクトに携わってきました。声を広く届けるための戦略や当事者への寄り添い方など、社会を変える取り組みを陰で支える「プロの広報力」に迫ります。

若林直子
若林直子 1975年東京都生まれ。PRコンサルタント、コーディネーター。社会課題解決事業を中心としたPRを行う。遺児家庭支援の「あしなが育英会」、子どもの貧困問題の解決を目指すNPO法人キッズドア、ダイバーシティ&インクルーシブな社会を目指す「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、ジャーナリスト伊藤詩織氏、エッセイスト小島慶子氏らとコロナで困窮する人たちをサポートする「ひとりじゃないよプロジェクト」などを担当。

編集部(以下、略) 社会活動を専門に手掛けるPRの方は珍しいと思うのですが、今のお仕事を始めたきっかけは? もともと社会貢献やボランティアに興味があったのでしょうか。

若林直子さん(以下、若林) いえ、全然です(笑)。社会人になった当初は一般企業で事務職などをしていて、NPOのこともほとんど知らないような人間でした。

 あるとき仕事ですごく嫌なことがあって、夜ワインを飲んで酔っ払いながら「転職してやる!」と、求人サイトをいろいろ見ていたんです。そこで目にとまったのが、認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」という団体が広報を募集しているという情報。支援の内容も素晴らしかったのですが、その団体がやっている寄付の仕組みにも興味を引かれました。

 それはプロ野球選手の和田毅投手が、試合で1球投げるごとに10本のポリオワクチンを途上国の子どもたちに贈るなどというもの。この「僕のルール」という活動がすごく共感を集めて、歌手でタレントの早見優さんが絵本を読み聞かせするごとに寄付をしたり、新聞販売店の営業担当が契約を取れるごとに寄付をしたりと、いろんなところに広がっていったというんです。これって社会貢献にもなるし、寄付をした人自身も周りもハッピーになるし、いいことしかないですよね。こういう活動をもっと増やしていきたいなと思って、転職しました。

 実際に仕事をしてみると、これはすごく面白い世界だなと。NPOにボランティアで集まってくる人たちって、大企業の会長も学生さんも、役職だとか年齢・性別に全く関係なく、みんなフラットな関係で一緒に事務作業をやったりするんです。しかも魅力的な人が多い。今、私は交友関係が広いねってよく言われるのですが、大体がボランティアを通じて知り合った方々です。

 その一方で、NPOの多くが広報力に課題を抱えていることも実感するようになりました。