生活習慣、人間関係、仕事……長く続けていることほど、やめるのは難しいものです。そうして知らず知らずのうちに、抱える「荷物」が増えていませんか? やめることは決して後ろ向きな行動ではなく、むしろ身軽になって、自分が大事にしたいことがよく見えるようになります。実際に「やめること」で人生に新たな展開が生まれ、働き方や生き方の風通しがよくなった人たちに話を聞きました。

 習慣や考え方の癖を「やめる」ことで人生を切り開いてきたという編集者・ライターの一田憲子さん。50代を迎えてからは、さらにさまざまなことをやめて楽になったといいます。どんなきっかけでどのように手放していったのか、話を聞きました。

「プラスの習慣を作ろう」と無理に頑張らない

編集部(以下、略) 著書『大人になってやめたこと』で、50代になってから思いや癖、食べ物やおしゃれのこだわり、日々の習慣などをひとつひとつ手放していったと書いてありましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?

一田憲子さん(以下、一田) 特にきっかけというものもなく、50代になった頃から徐々に、自然に手離れするようになっていきました。「やめよう」と思ったわけではなく、気力も体力もどんどんなくなってきて、今までできていたことができなくなったという感じです。

―― 例えばどのようなことができなくなってきたのですか?

一田憲子
一田憲子
いちだ のりこ/編集者・ライター。1964年、京都府生まれ兵庫県育ち。OLを経て、編集プロダクションに転職。その後フリーライターとして女性誌や単行本の執筆などを手がける。2006年にライフスタイル誌『暮らしのおへそ』、2011年には『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)を立ち上げる。2017年からWEBマガジン『外の音、内の香』を運営。著書に『大人になってやめたこと』(扶桑社)など

一田 例えば今までは夜に原稿を書いていたのが、眠くなってしまって書けなくなるなど頑張りがきかなくなったんです。でも代わりに早く起きられるようになりました。40代の頃は、早起きに憧れて朝型生活にシフトしようと思ってもできなかったんですけどね。

 いろんな方に取材していると、朝型生活などのすてきな習慣にたくさん出合うのでついまねしたくなって次々に試してみるものの、いつも三日坊主で終わってしまう。習慣って、結局は意志の力で変えるものではなく、体が気持ち良いと感じる方向に変わっていくものなのだなと。プラスのものを無理やり作るんじゃなく、うまくマイナスされていくものなのだなあと最近気がつきました。