生活習慣、人間関係、仕事……長く続けていることほど、やめるのは難しいものです。そうして知らず知らずのうちに、抱える「荷物」が増えていませんか? やめることは決して後ろ向きな行動ではなく、むしろ身軽になって、自分が大事にしたいことがよく見えるようになります。実際に「やめること」で人生に新たな展開が生まれ、働き方や生き方の風通しがよくなった人たちに話を聞きました。

 元祖ノマドワーカーのアンドウミフユ(安藤美冬)さんは、SNSを駆使し、個人が影響力を持って仕事を生み出す「新しい働き方」を切り開いたパイオニアです。そんなアンドウさんが2018年にすべてのSNSアカウントを停止。約750日間、SNSをはじめ、ネットから距離を置く生活を送っていたと言います。(下)では、どのようにSNSから卒業したのかについて詳しく聞きました。

SNSから段階的に離れていく3ステップ

―― 具体的にどのようにしてSNSから距離を置いていったのでしょうか。

アンドウ SNSをやめる前の私は、ネットにつながっている時間が1日6時間を超える日もあったんです。ダイエットと同じでいきなりやめると反動で戻ってしまう気がしたので、まずは「時間制限」から始めました。次に「スマホのアプリを削除(アンインストール)」。最後に「SNSのアカウントから退会する」というように段階的にやめていきました。

 起床時と就寝前は誘惑が多くて、ついついSNSを見てしまうので、最初は14~15時など仕事に集中している時間だけ「機内モード」にしてスマホに触れないようにしました。その後は、土日の午前中や寝る前の2時間だけはやめる、というように見ない時間を少しずつ増やしていきましたね。

 すると、次第に夕方から翌朝まで見なくても大丈夫になりました。そうやって「つながらない生活」に自分を慣らしていったんです。

 半年ぐらいたつとだいぶ慣れてきたので、第2ステップの「スマホのアプリ削除」へ。スマホに入っているTwitter、Facebook、Instagram、ブログのアプリを削除しましたが、パソコン上では見られるようにしていました。

 ただ、スマホからアクセスするより不便なので、投稿回数も自然と減っていくんですよ。今まではスマホで撮った写真を即SNSにアップしていましたが、パソコンだとスマホから写真を送る手間がかかるので、次第におっくうになってきて。それにワンクッション入ることで冷静になれるので、「この情報ってアップする必要ないのでは」と思えてくるんです。

 そう考えると、ほとんどのことっていらなかったなと気づいてしまいました(笑)。

―― SNSから順調に離れていっているように聞こえますが、その間、葛藤はなかったですか。

アンドウミフユ 作家、コメンテーター
アンドウミフユ 作家、コメンテーター
1980年生まれ、東京育ち。著書累計20万部。慶応義塾大学卒業後、集英社に入社。7年目に独立し、本やコラムの執筆をしながら、パソコンとスマートフォンだけでどこでも働ける自由なノマドワークスタイルを実践。「情熱大陸」「NHKスペシャル」などメディア出演多数。近著に『つながらない練習』(PHP研究所)、『新しい世界へ』(光文社)などがある