ARIA世代のアンケートで、自分の健康やお金の次に気にかかっているのが「親の健康と介護」(38%)。仕事で忙しくしてきたARIA娘から、少しずつ老いゆく親へ、元気なうちだからこその「贈りもの」とは? 遺影にも使える記念写真の撮影とメイク、実家の片付けなど、親も娘も心に残るイベントや言葉をご紹介。

 まだまだ元気な親世代。でも昔と変わらないように見えても、年々頑固になったり、おせっかいが多くなったりしてきた気がする。もしくは、家事が雑になって、ぼーっとしている時間が増えたような気もする……。親のちょっとした変化に「どうしちゃったの?」と気をもんだり、ついきつい言葉をかけてしまったり、ということもあるかもしれません。そんな「困った」親の行動の背景と、うまくコミュニケーションを取る方法について、大阪大学大学院教授で、老年行動学などを研究する佐藤眞一さんにアドバイスしてもらいます。


実年齢と主観年齢が20歳も離れている70代

 昔に比べると今の親世代(60代後半~80代)は見た目も、中身も若々しく見えます。昔よりも衛生状態や栄養状態が良くなり、運動・禁煙などの健康志向も高まっていて、実際「若い」のです。その分、ちょっとした親の衰え、老いが目に付きやすくなっているといえるでしょう。

 親自身の立場に立つとどうでしょうか。人の成長や老化は、1年に一定量ずつではありません。子どものときから20~30代までは、心身の成長など、変化していくことを実感しやすいのですが、その後は大きな成長も老いも感じにくいフラットな状態が長く続きます。そのため、自分が感じる自分の年齢=「主観年齢」は、暦通り1年に1歳ずつ増えてはいきません。70代になっても、実際の年齢より主観年齢が10歳ほど若いとする調査もあります。主観年齢に沿って、他者が考えるよりも若い行動を取ったりするのです。

気分をポジティブに保つことが今後の人生で重要に

 自分のことを自分でどう認識しているかを、心理学の用語で「メタ認識」または「メタ認知」といいます。多くの高齢者は「自分は有能である」というメタ認知を持っています。

 身体が衰えたり、それによる生活の不自由を感じたりしながらも、自分という存在を肯定して生き続ける……。それには有能感が高くあることが必要です。年を取るほど自己肯定感が強くなったり、自尊心が高くなったりするのは、身体が利かなくなったことで自己否定に傾きそうになる気持ちを上向けるための、自己防衛機能ともいえるでしょう。

 若い人よりも高齢な人のほうが、ポジティブなことに目が向きやすいことが分かっています。高齢になって残された時間が短いことを認識するようになると、気分をポジティブに保つことが、今後の人生で重要になるからです。

 上記のような理由から、高齢になると、周囲からの見られ方と本人の行動にギャップが生じたり、性格・性質が変わったように感じられたりするのです。また、老いによる心身の衰えが言動に表れることもあるでしょう。気になる行動などがあったとき、子世代はどう向き合い、どのように声をかければいいのでしょうか。具体的なケースをもとに見ていきます。

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「高齢になって残された時間が短いことを認識するようになると、気分をポジティブに保つことが、今後の人生で重要になります」と話す佐藤教授
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