父を見ていてすごいなと思うのは、食器を納める場所とか、洗濯の仕方とかたたみ方とかしまう引き出しとか、全部母のやり方を踏襲しているんです。実は、父は家事をサボっていたわけではなくて、専業主婦の母のことをすごく尊重していた。父は家事を「やらせてもらっていなかったけど、やり方をちゃんと見ていた」のだと気づきました。

 父が「あんたはあんたの好きなことをしろ」というのは、私が小さい頃からずっとです。家庭の事情から文学を研究する道を諦めた父は、一人娘の私が好きな道に進むことで無念を晴らしているようなところがあった。私はそんな父に反発するような時期もありましたが、母が認知症になって自分も体力的につらいだろうに、それでも同じことを言い続ける父を見ていると、本当に信念の人なんだなあ、と感心します。

つらくても客観的に撮影することで、父の日常を知った

―― 自分で頑張ろうとするお父さんですが、買い物をした荷物を休み休み運ぶ姿は見ていてつらくもあります。

信友 「日常を撮るから、今日は手伝わないね」と説明して遠くから撮影していたのですが、撮っているカメラがふらっとする瞬間があります。もうやめようか、って迷った瞬間なんですね。自分の仕事とはいえ、このときは客観的に撮るのがつらかったのですが、同時に、普段はこんな風に生活しているんだ、と気づけた瞬間でもありました。撮影が終わった直後に、買い物が楽になるシルバーカーを買ってプレゼントしました。以来、外出するときに使ってくれています。

買い物をした荷物を休み休み運ぶ父の姿を撮るのは、仕事とはいえつらかった(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会
買い物をした荷物を休み休み運ぶ父の姿を撮るのは、仕事とはいえつらかった(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

―― いよいよ介護サービスの方をおうちに受け入れるようになるところまでが映画で描かれています。その後のご両親は?