実家に戻ろうとする娘、戻らぬよう説得する父

信友 診断では認知症ではないということでしたが、私は心配でしたから、以前よりも実家に戻る機会を増やし、母には毎日電話をすることにしました。そうしているうちに、やはりこれは認知症では……ということになり、再び病院に連れて行ったのが2014年のお正月。このときは、もう母も頑張り切れなくて、認知症と診断されました。

―― 認知症の診断が下って「直子(私)が帰ってこようか?」とお父さんに問いかけますが、「帰らんでええ。あんたはあんたの道を進んだほうがいい。わしが元気なうちはわしがやる」とお父さんは(映画の中で)答えますね。

信友 父がそんな風に考えている人だと分かったのは、母が認知症になってからなんです。それまでは、私と母がすごく気が合っていつまでもしゃべっているのを、寡黙な父は「女同士はいいな」って見ているような家で、私と父はそんなに会話があるわけではありませんでした。でも、母のことを相談する相手は父しかいない。

母が認知症だと分かって実家に戻ることを提案した一人娘に、父がかけた言葉。「そんな風に考えているんだ、と思いました」

信友 家に介護サービスを入れられれば、様子を知らせてもらえるので安心だったのですが、父は断固として「自分で面倒を見るから」と反対。それまでは、一切家事をやらなかった大正生まれの父が、宣言通り、母に代わって何でもやるようになりました。掃除、料理、さらに、針を持って縫い物まで! 母がピンチになるとここまで助けるんだ、案外いい男だなということを私が再発見している過程が、今までずっと続いているように思います。

徐々に家事ができなくなる母に代わって、大正生まれの父が家事全般を担った(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会