新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 2020年2月以降、新型コロナ禍の激流にもまれながらも、なんとか会社の「この先、当面の生存」のめどをつけたWAmazing(ワメイジング)の加藤史子さん。オフィスからの完全退去や社員の一部休業や出向など、会社全体に不安を招きかねない戦略を社員たちにどのように伝えてモチベーションを保ったのでしょうか。こうした状況だからこそ見えてきた災禍の思わぬメリットや、日本でスタートアップ企業が育つための環境整備に対する思いなどを聞きました。


加藤史子
WAmazing 代表取締役社長CEO
かとう・ふみこ/1976年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、98年にリクルート(現、リクルートホールディングス)に入社。「じゃらんnet」、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げなど、主にネットの新規事業開発を担当後、観光による地域活性を行う「じゃらんリサーチセンター」で「雪マジ!19」などフリーミアム事業を展開。2016年7月、「日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に」をビジョンに訪日外国人旅行者向けプラットフォームビジネスを展開するWAmazingを創業

数字に基づいた「来るべき明るい未来」を社員に示す

 訪日外国人旅行者向けビジネスに特化していた我が社は、新型コロナという未曽有の災禍で、短期的な経営については厳しい面ばかりが見えてしまう状況に直面しました。そんな大変なときこそ、リーダーは直近の決断や戦略を示すだけでなく、中長期的な未来についても語る必要があると私は考えています。オフィスの退去を決断した5月初めに全社員を集めて、訪日外国人市場は中長期的には必ず成長していく市場である理由をさまざまなデータを示しながら、丁寧にプレゼンテーションしました。自分たちの歩いていく道には光が見えていることを理解してもらえば、短期的な戦略が厳しいものでも、それにまい進できるからです。

訪日外国人旅行者向けビジネスのスタートアップWAmazing 代表取締役社長CEOの加藤史子さん。コロナ禍のさなか、全社員を集めて会社の現状と未来を伝えた
訪日外国人旅行者向けビジネスのスタートアップWAmazing 代表取締役社長CEOの加藤史子さん。コロナ禍のさなか、全社員を集めて会社の現状と未来を伝えた

 そのときの大まかなプレゼンの内容は次のようなものです。