新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 2カ月近くに及んだ緊急事態宣言にともなう自粛要請が、首都圏、北海道を最後に全国で解除されました。しかし、自粛期間に経営状況が急速に悪化し、倒産する企業が増加。それにともなって失業者が急増しています。大阪市でホームレスの人の自立支援を行う認定NPO法人Homedoor理事長の川口加奈さんに、相談に訪れる人の変化や必要な対策について話を聞きました。


川口加奈
認定NPO法人Homedoor理事長
かわぐち・かな/1991年大阪府高石市生まれ。14歳でホームレス問題に出合い、ホームレス襲撃事件の根絶を目指し、炊き出しなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等で生活困窮者ら累計2000名以上に就労支援や生活支援を提供する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、人間力大賞グランプリ・内閣総理大臣奨励賞・参議院議長奨励賞受賞、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」等を受賞。大阪市立大学卒業。

ホームレスの人からの相談件数は昨年の3倍に

―― 現在失業者が急増していますが、Homedoorに相談に来る人も増えていますか? 

川口加奈さん(以下、敬称略) はい、相談件数で見ると、2020年3月が72件、4月が107件と増えています。2019年の4月は37件でしたので、 昨年と比べると3倍という状況です。

 営業自粛要請でネットカフェが閉鎖されたり、公園のベンチなどが利用できなくなったり、ホームレスの人たちが過ごせる場所がなくなってしまったのも、相談者が増えた要因だと思います。

 実は、リーマン・ショックのときも、2008年10月の世界的株価暴落から2カ月で年越し派遣村(*)ができていましたので、失業者が発生してから実際にホームレスの人が急増するまでにはタイムラグがあると言われています。今回は4月、5月に企業が大きなダメージを受けているので、7月、8月にかけて生活困窮者が多くなるのではないかと予想しています。

 相談に来る人の多くは以前から不安定就労者で、コロナショックで雇い止めにあっている人たちです。ただ、新型コロナ以前の昨年から、若年層の相談が増加傾向にあります。家庭に居場所がない若い人がWebで調べて相談に来ています。

*派遣切りされた労働者らに年末年始の食事と寝泊まりできるところを提供しようと、労働組合や支援団体などが東京の日比谷公園に設けた場のこと
「生活に困ったら、遠慮なく支援団体や行政に相談して!」と川口さん
「生活に困ったら、遠慮なく支援団体や行政に相談して!」と川口さん

―― 具体的にはどんな支援をしているのですか?