新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 コロナ・ショックは世界中の健康と生活様式を大きく揺り動かすだけでなく、グローバル経済にも大きな打撃を与えています。経済再開がおぼつかない現在、完全な経済回復には2023年までかかるといった予測も挙がっています。そこで、マネックスグループのCEOであり、グローバル企業の社外取締役でもある松本大さんに、コロナ後の日本経済、世界経済の見通しについてビデオ会議で聞きました。


松本 大
マネックスグループCEO、マネックス証券取締役会長
まつもと・おおき/1963年生まれ。東京大学法学部を卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現・シティグループ証券)に入社。ゴールドマン・サックス証券勤務を経て99年にマネックス証券を設立。日本を代表するネット証券グループを率い、現在はマスターカード社外取締役など、多数の企業の取締役にも就任。経済財政諮問会議「選択する未来」委員。著書に『私の仕事術』(講談社+α文庫)、『お金という人生の呪縛について』(幻冬舎)など

世界は変わるのか、それともまた元に戻るのか

 新型コロナウイルス感染のピークから落ち着きを見せ始め、世界的にコロナ後の社会が徐々に始まりつつあります。私たちの社会は、コロナ以前とは全く変わってしまうのか。それともこの変化は一時的なもので、いずれ元の世界に戻るのか。今は、まだ、そのどちらに行くのか分からず、混沌とした状態です。

 やっかいなのは、一度変わってしまったことが、元に戻るかもしれないというケースです。社会の前提が変化すれば、社会生活や経済活動もそれに合わせて変わらずにはいられません。しかし、一度変化させてしまったものを、元に戻すことは、非常にハードルが高い。さらに、いつ戻るのかどうかも分からないのですから、対応がしにくいのです。

周回遅れの日本が、世界と同じスタートを切るチャンス

 コロナは、本来なら何年もかけるような社会の変化を、たった1、2カ月で根底から変えてしまいました。この極めて速いスピードで進む変化に、世界中の企業が対応していかなくてはいけないのです。実は、そこに日本企業のチャンスが潜んでいます。

マネックスグループCEOの松本大さん。コロナがもたらした社会の急速な変化に、日本企業のチャンスが潜んでいるという
マネックスグループCEOの松本大さん。コロナがもたらした社会の急速な変化に、日本企業のチャンスが潜んでいるという

 この10年、テクノロジーの急速な進化で、世界全体が大きく変わりました。日本はその変化への対応で、海外より出遅れていたのです。しかし、コロナは、あらゆる世界に強烈なインパクトを与えました。今、コロナの影響下でもがいているのは、日本も海外も関係なく、全世界の企業です。

 見方を変えると、周回遅れの日本でも、世界と同じスタートラインに立てるチャンスということです。同じ土俵に立つことで、日本も起死回生できるかもしれない。アメリカや中国はすでにコロナ後に向けて動き出しており、それに比べると動きは鈍いのですが、まだまだ日本は十分戦えるポジションにいます。世界と同等にスタートを切れるこのチャンスをどう生かせるかは、今後の日本を占う大きなポイントです。