新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、世界中でデジタル変革の動きが猛烈に加速しています。働き方が遠隔・デジタルに急シフトする中、働く人のメンタルリスクや、機密情報の漏洩リスクが急上昇。先進企業ではAI(人工知能)の本格導入を前倒しして対応を始めています。さらにコミュニケーション基盤のデジタル化で、リーダーの優劣が即座に「見える化」される時代が到来。AI研究者の野村直之メタデータ社長に、既に始まっている動きを聞きました。


野村直之
メタデータ社長、AI研究者
のむら・なおゆき/1962年生まれ。1984年東京大学工学部卒業、2002年理学博士号取得(九州大学)。NEC C&C研究所、ジャストシステム、リコーなどを経て法政大学大学院客員教授。2005年にメタデータを創業。ビッグデータ分析やソーシャル活用など、自然言語処理を応用した人工知能API群を提供。主な著書に『人工知能が変える仕事の未来』(日本経済新聞出版、2020年6月に大幅改訂し日経ビジネス人文庫より再発売)、『実践フェーズに突入 最強のAI活用術』(日経BP)、『AIに勝つ! 強いアタマの作り方・使い方』(日本経済新聞出版)などがある。

 欧米で新型コロナウイルスの感染が拡大してから、SNSで流布されたジョークがあります。「あなたの企業のDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)を推進したのは誰ですか? 1.CEO 2.CTO 3.COVID-19」。答えは言うまでもなく3の「COVID-19(新型コロナウイルス)」、というわけです。

 多くの人がテレワークに働き方をシフトした日本でもいや応なくDXの動きが加速していますが、それに伴う問題も明らかになってきました。

 ある企業は今年、数百人規模の新入社員の研修をすべてリモートで実施しました。人事部はものすごく気合を入れていろいろなオンライン教材を準備し、受講スケジュールをきっちり管理しました。リモート受講者のモラルハザードを恐れて、例年よりはるかに厳しい研修をリモートでやった企業は他にもありますが、過剰な遠隔監視や管理で社員のメンタルが下がってしまう懸念が生じています。

 「テレワークうつ」という言葉もよく聞かれるようになりました。オフィスで対面していたら上司や同僚が気づけた部下の変化も、テレワークではなかなか気づけない。コミュニケーションとマネジメント上の大きな問題です。

自然言語処理を得意とするAIの研究開発を手がけるメタデータ社長、野村直之さん
自然言語処理を得意とするAIの研究開発を手がけるメタデータ社長、野村直之さん