新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 ワーク・ライフバランス代表取締役社長・小室淑恵さんによるオンラインセミナーから、(上)の『リモートワークで生産性を上げる秘訣とは』に続き、日本経済にとって働き方改革が必要な理由を解説します。


ワーク・ライフ・バランスは育児世代だけのもの?

 安倍内閣が「働き方改革」を打ち出したのは2018年からですが、そもそもなぜ働き方改革が必要なのでしょうか。

 実は働き方改革は単に長時間労働を減らして私たちの人生を充実させるだけでなく、低迷する日本経済を浮上させるカンフル剤なのです。新型コロナの影響で、いや応なく日本全体が働き方改革に舵を切り始めた今、経済の実情や未来を知ることで意識を変え、新型コロナ終息後も改革を推し進めていきましょう。

働き改革について1000社以上にコンサルティングを行ってきたワーク・ライフバランス代表取締役の小室淑恵さん
働き改革について1000社以上にコンサルティングを行ってきたワーク・ライフバランス代表取締役の小室淑恵さん

 「ワーク・ライフ・バランス」は、育児や介護など家庭のある人を配慮する施策と考えていませんか? それはワーク・ライフ・バランスではなく、「ワーク・ファミリー・バランス」です。一見、育児女性に優しい企業のようですが、会社全体の働き方は変わらないのに、一部の人には残業を付けないように配慮しろと打ち出すと、「じゃあ、独身の人に仕事を上乗せしよう」となります。

 こうした企業では家庭を持つ人と持たない人の対立構造が深まり、いざ仕事というときに一枚岩になれないので成果が出ず、業績にはマイナスになります。

図はワーク・ライフバランスの資料を基に編集部作成
図はワーク・ライフバランスの資料を基に編集部作成

 ワーク・ライフ・バランスは全社員が対象です。家族がいる人だけでなく、すべての人に「ライフ」があることを前提として、職場全体の仕事のやり方を見直すのが、本当のワーク・ライフ・バランスなのです。

 趣味や自己研さんなど「ライフ」の内容は人それぞれ。私生活が潤うことで心身ともに健康になり、人脈も広がり、自己研鑽を積めるようになる。そこで初めて、仕事の成果も上がります。仕事の成果が出るから、またライフが潤う。好循環が生まれ、豊かに大きくなっていくのです。

 では、ワーク・ライフ・バランスを実現し、長時間労働を減らすことがなぜ今、必要なのでしょうか。