新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全国を対象に緊急事態宣言が出され、世界でも先進国を筆頭に人的、経済的、社会的に大きな犠牲がもたらされています。働き手として経済を支えていくべき私たちは、今後、どんな働き方・生き方をしていけばいいのでしょうか。現在を正確に知ってより良い将来につなげるために、各界のリーダーに取材した声を緊急特集でお届けします。

 ジャパネットたかた創業者で、テレビショッピング番組のMCとしても知られた高田明さん。近年はサッカーJ2(当時)のクラブチーム、V・ファーレン長崎の社長を務め、J1昇格に貢献するなど経営者としての手腕も改めて評価されました。伝える仕事のプロとして長年第一線で活躍してきた高田さんに今、感じていること、これから社会はどう変わっていくかを聞きました。


高田 明
ジャパネットたかた創業者、V・ファーレン長崎前社長、A and Live代表取締役
たかた・あきら/1948年、長崎県生まれ。71年、大阪経済大学経済学部卒業後、阪村機械製作所に入社し通訳として海外駐在を経験。74年、故郷に戻り、父親が経営するカメラ店で働く。86年に独立し、「たかた」(現ジャパネットたかた)を設立。90年にラジオ通販、94年にはテレビ通販に進出。売上高1700億円を超える企業に成長。2015年、社長を退任。同時にA and Liveを設立。17年4月から約3年間、サッカーJ2(当時)のクラブチーム、V・ファーレン長崎の社長を務め、J1昇格に貢献した。著書に『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社)など。

 私は、どうして今のような状況になったのだろうと、大変な時代に入ってしまったと思っています。感染症は14世紀のペスト、100年前のスペイン風邪など、世界で流行と収束を繰り返してきました。新型コロナウイルスは、医療も文明も進んだ現在、なぜここまで世界に拡散してしまったのかと。

どの業界でも求められる「先を予測する力」

 日常の生活を取り戻すため、新型コロナウイルスの短期終息を達成することが一番でした。なぜ、感染が世界的に拡大してしまったのでしょう。各国でそれぞれに対策が講じられていますが、今起きている問題を世界レベルの視点で捉え、どう対処するかというリーダーシップを取れる人がもっといれば、世界レベルで終息できたかもしれません。新型コロナウイルスを人類の危機と捉えれば、自国も他国もノーサイド。情報を共有して、知恵を集めて対策をすれば、短期間に終息できたと思います。ビジネスの世界でも共存し共栄していくことで皆がハッピーになっていきますからね。

 どの業界においても先を予測する力が必要だと思います。今回のコロナを「人類の危機」と早い段階から捉えていたら、対策も違ってきたかもしれません。例えば国の対策で、予算を200兆円出して「国民の生活を保障します。だからすべて店は閉めてください。1カ月間辛抱してください」と、強いメッセージを明確に出すこともできたでしょう。最も大切なのは「人の命」ですから。そのとき200兆円のうち50兆円が無駄になるかもしれません。でも、短期終息して経済や医療の崩壊の方向を防ぐことができれば、結果としては無駄が無駄じゃなくなると思うのです。もちろん、200兆円の投資を取り戻すためには、終息の後、私たち一人ひとりにも努力していく覚悟が必要です。

「リーダーには先を予測する力が必要」と話す、ジャパネットたかた創業者の高田明さん。長年、経営者として、またテレビショッピングのMCとして第一線で活躍した
「リーダーには先を予測する力が必要」と話す、ジャパネットたかた創業者の高田明さん。長年、経営者として、またテレビショッピングのMCとして第一線で活躍した