新型コロナウイルスのパンデミックという100年に1度の危機に直面し、「今こそ誰かの力になりたい」「何か自分にできることをしたい」という思いがわき起こった人も多いでしょう。1歩を踏み出した人たちのケースから、忙しくても無理のない範囲でできる「社会活動」について考えます。誰かのためにと思ったことが、実は自分に大きな何かをもたらして人生を豊かにしてくれます。

 「N女」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? NPOをはじめ、NGOや社会的企業など、営利・非営利を問わず社会貢献分野で働く女性のこと。今、NPOなどソーシャルセクターに関心を寄せ、転職したいと考えている「潜在N女」が続々と増えているようです。

 そう語ってくれたのは、2014年に「N女プロジェクト」を発足し、代表を務める杉原志保さん。これまで数多くのNPOを支えてきた杉原さんだからこそ分かる、NPOの実態や働き方、そして「N女」に仲間入りしたい人のための「初めの一歩」など、たっぷりと伺いました。

DVシェルターとの出合いがNPO支援のきっかけに

―― 杉原さんがNPOを支援するようになったきっかけについて聞かせていただけますか?

杉原志保さん(以下、敬称略) 私自身、もともと「ジェンダー課題」に関心がありまして、大学院時代に自治体のジェンダー政策の調査や計画作りを行う機会に恵まれました。そのときのご縁がきっかけで、川崎市役所に入庁することに。「専門調査員」として、男女共同参画の政策立案や計画の実行を担当するようになりました。

杉原志保(すぎはら・しほ)<br>NPO法人 NPOサポートセンター・N女プロジェクト/ALT 代表<br>1975年生まれ。中央大学大学院法学研究科修了後、川崎市役所、かわさき市民活動センターなどを経て現職に。2014年に社会貢献分野で働く女性たちが組織の枠を超えて協働する「N女プロジェクト」を発足、2018年に「ALT」代表としてプロジェクトを推進。
杉原志保(すぎはら・しほ)
NPO法人 NPOサポートセンター・N女プロジェクト/ALT 代表
1975年生まれ。中央大学大学院法学研究科修了後、川崎市役所、かわさき市民活動センターなどを経て現職に。2014年に社会貢献分野で働く女性たちが組織の枠を超えて協働する「N女プロジェクト」を発足、2018年に「ALT」代表としてプロジェクトを推進。

 そこで地域のさまざまなNPOの方たちと関わるようになったのですが、中でも印象的だったのは、DVシェルターを運営するNPOとの出合いでした。

 その団体は「DV被害に遭う女性たちを救済する」という取り組みを行っていましたが、補助金を増やしてほしいと訴える理由が、行政の側に伝わり切らなかったんです。政策には優先順位がある。予算にも限りがある。「私たちは重要な活動をしているから支援してください」だけでなく、その活動の社会的意義や必要性を、行政が納得できるよう客観的に説明できれば、結果は違っていたかもしれません。

 この団体をはじめ、多くのNPOが共通して抱えているのは、「運営するためのお金がない」ということでした。どうしたらNPOが補助金に多くを頼らず自立した運営ができるようになるのか? 次第にNPOの資金調達に疑問を持つようになり、「これは自分が現場に入って学ぶしかない」と川崎市の中間支援組織(かわさき市民活動センター)に就職しました。その後、現在の勤務先である民間のNPOサポートセンターに移り、自治体向け事業の管理責任者としてさまざまなNPOの支援に当たっています。

―― 具体的にはどんな支援を?