肩書を背負ってボランティアに参加したらもめる

外村 本書にも書いてありますが、企業に「メンターン」に行くのがいいですね。若手にとってのメンターとして存在しつつ、同時に若手からも学ぶインターンということです。でもそれは受け入れ側の問題もあるので、今の日本ではなかなか難しいかもしれませんね。

 日本社会の現実を見ると、NPO団体やボランティアへの参加が一番いいかもしれません。外に出て多様な人たちと一つのことを動かさなきゃいけないというのは、非常に学びがあるんです。一つ面白い話があって、ボランティアの現場に大企業的な人がくると、結構もめるんですよ(笑)。悪気なく人に指示を出して、みんなにそっぽむかれるとか。

―― 当たり前だと思っていたことが通用しない、ということに気づくんですね。

外村 そういうことです。普段は周りに「部長の言うことだから正しいだろう」と思ってもらえるのですが、それはゲタをはかせてもらっているのだということに気づいていないだけなんです。

 例えば私は今、毎週フードバンクのボランティアに行っていて、みかんとかニンジンとかを言われた数量ずつ袋に入れて困っている人に渡すという作業をしているのですが、効率の良い梱包の仕方を思いついても、それを伝えるのに一苦労することもあるんです。スタッフには高校生もいれば年配の方もいる。価値観もさまざまですし、知識量にも差がありますから、「それに何の意味があるの?」とか言われてしまう。いろんな考え方の人に理解してもらう力、すなわち共感力が必要になります。

 ボランティアの現場ではもちろん、誰がどこの会社の役員だとか肩書は通用しません。どんな仕事をしてきたかとかも関係ない。人間力で勝負しなければいけないんですよね。

 このように好奇心を持っていろんな場所に顔を出して学ぶことはモダンエルダー力を高める良い方法の一つだと思います。でも同僚との飲み会や大学時代の友達とお茶をするというのでは意味がありません。結局同じセグメントの人たちと共通の言語で会話するだけですから。そういう意味で副業やプロボノも、自分の得意な分野でばかりやるのでは効果は限定的かもしれませんね。

 そう考えると、ボランティア活動は全く関係ない人とつながれますし、世の中の役に立っているという実感は自己肯定感にもつながります。モダンエルダー力を鍛える、今一番のおすすめの方法です。

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著者チップ・コンリーはホテルを創業して経営したのち、シリコンバレーで注目のスタートアップ「エアビーアンドビー」の創業者に頼まれ入社。二回りも年下の若者たちに囲まれて、尊敬されながら楽しく働き成果を出す「モダンエルダー」としての働き方を解説します。

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取材・文/磯部麻衣(日経xwoman ARIA) 写真提供/外村仁さん