コンピューターやAIに負けない年長者の知恵

外村 日本の女性たちは前述のスキルが特に高いと思っています。これはつらい立場を経験した人でないとできないものなんです。ずっと恵まれた立場にあった人たち、上から目線が許される環境にいた人たちというのは年下に「何があったの?」なんて聞きにいくことはなかなかできないんですよね。

 ただ天井のある息苦しい社会で生きてきた日本の女性たちは、自己肯定感が低い傾向にあるので、調整役を務めた経験がスキルになると思っていないかもしれません。でも振り返ってみると「あなたのおかげで問題が解決できたよ」と感謝されたことはありませんか? その経験を「○○な問題を見つけ出し解決し、物事を前に進めた」と表現し直すことで、自分がやってきたことがプラスに感じられるはずです。

 これは年長者たちの「ウィズダム(知恵)」というものです。私が解説を書いた『モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方』(日経BP)には、モダンエルダーになるための知恵をブラッシュアップする方法がいくつも書かれていますが、一番共感を得やすいポイントはこの「自分の経験を認識して強みとして表現する」ことではないでしょうか。

 私は、日本女性にはとりわけこの「これまで強みと認識されなかった強み」が多いのではないかと思っています。それを2個、3個と増やしていくことがモダンエルダーになる近道だと思っています。

 日本はいまだナレッジ(知識)重視の国なので、転職活動をするときなどは持っている資格や仕事の成果などを持って挑むことが多いでしょう。しかし、もうナレッジワーカーは時代遅れです。これからはナレッジではなく、コンピューターやAIにとって変わられないウィズダムが重宝されていく時代。年長者はこのウィズダムを持っているということに気づくことで、自己肯定感が上がり、不安を恐れずに前向きに考えることができると思っています。

―― 他にもモダンエルダーになるためにできることはありますか?