企業の管理職、チームリーダーとして、組織を統率する立場にあるARIA世代。20代の新入社員から定年間近の50代まで、さまざまな価値観のメンバーを束ねなければならないばかりか、時に自らもプレーイングマネジャーとして動かなければならず、日々悪戦苦闘している人も多いでしょう。しかし、完璧なリーダーが、強いチームをつくるわけではありません。どのようなリーダーが今、求められているのか? 部下とのコミュニケーションはどうすればいいのか? アンケート調査や成功事例から、令和時代のリーダーシップと最強チームのつくり方を探ります。
仕事は辞めちゃだめだよ
佐藤 浩子さん(仮名、54歳)
外資系金融機関 IT部門。3回の転職を経て、現在の会社で勤続14年。2018年、社内の女性社員だけで構成されるワーキンググループに参画して活動。2019年には、IT部門で働く女性を対象とした社内チームのリーダーに起用され、女性が働きやすい職場づくりについて提言している

 女性の視点で会社を変える――。ある金融機関で、女性社員10人によるワーキンググループが発足した。縦割り組織を横断して選ばれたメンバーが、新規のイベント企画や、役員への提言を次々に実現。最大の成果は、若手から新しいアイデアが次々に生まれたことだという。中核メンバーだった佐藤さんは、その実績を会社から評価され、今度はIT部門で働く女性社員17人によるチームの長に起用された。若手のやる気を引き出す、成功の秘訣は何か。話を聞いた。

離職者を減らす目的で、ワーキンググループが発足

―― 佐藤さんがリーダーを任されたのは、どのようなチームだったのですか。

佐藤 浩子さん(仮名。以下、敬称略) 今から2年ほど前、会社でさまざまな部署の女性社員10人が選ばれてワーキンググループが発足しました。日常業務とは別のチームです。そこで与えられたミッションは「女性の視点で会社を変えること」。中でも第1の目標が、会社の離職者を減らすことでした。ここ数年、20~30代の社員が会社を簡単に辞める傾向が目立っていました。そのため、若い世代が活躍できる場を増やし、女性が働きやすい環境をつくるにはどうすればいいのか、会社に提言し、実行することが求められました。

 約1年半の活動で、若いメンバーからアイデアが次々に出てくるようになり、女性社員向けのイベント企画をいくつも実現しました。講演会、パネルディスカッション、社会貢献活動、社内アンケート、社内交流会などです。

―― どうやって、若手が積極的に発言するチームをつくったのですか。

佐藤 私自身がワーキンググループ内で「いつでも相談できる、話せる」人になる、つまり、何でも言いやすい環境をつくることを心がけました。若手が気軽に相談できたり、励まされたりする場が必要だと思ったのです。そのため3つのことを意識して、若手に声をかけるようにしました。

佐藤さんが若手の女性社員に伝えている3つのこと。(1)異動や転職、パワハラなど、何があっても絶対に仕事は辞めない。(2)自分を犠牲にしない。何かを犠牲にするとどこかにしわ寄せがくる。(3)やり方にはこだわらない。10人いれば10通りのやり方があって当然
若手の女性社員に伝えている3つのこととは? 答えは次のページで掲載
佐藤さんの社内アンケートで賛同者が多かった「理想の上司」像。(1)マイクロ・マネジメントしない人→部下の業務に強い監督・干渉を行わない人。(2)権力を持っている人→理不尽な要求や嫌がらせからスタッフを守れる人。 →必要に応じてスタッフの頭数をそろえられる人。(3)部署のニーズをしっかり聞く人。(4)ワークライフバランスを促進している人。(5)日ごろから感謝の気持ちを伝える人。
佐藤さんの社内でアンケートした結果、理想の上司像で多かったのは? 答えは3ページ目