企業の管理職、チームリーダーとして、組織を統率する立場にあるARIA世代。20代の新入社員から定年間近の50代まで、さまざまな価値観のメンバーを束ねなければならないばかりか、時に自らもプレーイングマネジャーとして動かなければならず、日々悪戦苦闘している人も多いでしょう。しかし、完璧なリーダーが、強いチームをつくるわけではありません。どのようなリーダーが今、求められているのか? 部下とのコミュニケーションはどうすればいいのか? アンケート調査や成功事例から、令和時代のリーダーシップと最強チームのつくり方を探ります。

 日経ARIAの読者調査で、リーダーの悩みとして最も回答が多かったのが「プレーヤーとマネジメントの両立が難しい」だった。日本では現在、部長の95%以上がプレーイングマネジャーというデータもある(産業能率大学総合研究所調べ)。加重平均では、部長業務の約4割がプレーヤーとしての仕事だという。これでは時間に追われて、マネジャー本来の役割がおろそかになるのもうなずける。

 どうすれば、こうした「働きすぎ」の状態から抜け出せるのか。リーダーシップに関する研修を多くの企業に実施している「らしさラボ」代表取締役の伊庭正康さんに、プレーイングマネジャーの仕事を軽くして、チーム全体で成果を上げるノウハウを聞いた。

9割以上の部長が「プレーヤー」と「マネジャー」を兼務。業務の51%以上がプレーヤーの部長、業務の31~50%がプレーヤーの部長、業務の30%以下がプレーヤーの部長、プレーヤー業務を一切していない部長
出典:産業能率大学総合研究所「上場企業の部長に関する実態調査」。設問は「現在のあなたの仕事におけるプレーヤーとしての仕事の割合はどの程度ですか?」。従業員数100人以上の上場企業に勤務し部下を一人以上持つ部長を対象にしたインターネット調査。調査期間は2019年3月20日~3月27日。有効回答数は336件。結果を編集部で合算して、小数点以下を四捨五入した

―― プレーイングマネジャーの働き方の現状を教えてください。

伊庭正康さん(以下、敬称略) プレーイングマネジャーは、専任のマネジャーとは違い一人二役をしなければなりません。部下のマネジメント業務に加えて、個人としての成果も求められます。常に指揮官が最前線で戦うイメージです。プレーヤーとマネジメント業務の両立は、思う以上に大変です。

自分のプレーヤーとしての業務は部下に引き継ぐ

―― 伊庭さんは「自分がいなくてもメンバーが勝手に動く最高のチーム」をつくることに成功したそうですが、どうすればいいのでしょうか。

伊庭 リーダーがプレーヤーの業務を、部下に引き継ぐことがポイントです。リーダーの仕事が楽になるのはもちろん、部下の力だけで仕事を回せれば、好業績を出せるようになります。「自分がやったほうが早い」という理由から、いつまでもプレーヤーの業務を続けるリーダーはいますが、中長期的に見れば、絶対に手放したほうが効率は上がります。

―― ARIAの読者からは「部下が頼りなくて仕事を任せられない」「チームが自分の思う通りに動かない」という声があります。

伊庭 多くのリーダーは、部下に何をすべきか、なぜやらなければならないかを言わないまま、いたずらに頑張らせようとしています。リーダーが語るべきは、「目標を達成しよう」とか「シェアNo.1になろう」ということではありません。それでは、人はついていきません。

あなたは一流のリーダーになれるか? 三流のリーダーは「業務の指示・確認」と「ご機嫌取り」しかしない。二流のリーダーは「目標を達成しよう」と会社の幸せを熱弁する。一流のリーダーは常に「They」の視点で語る。「お客様」や「社会」のために頑張ると言う
一流のリーダーは何を語る? 二流は何を熱弁する? 答えは次ページで