今の日本に圧倒的に足りていないもの。それは女性のリーダーです。120位というジェンダーギャップ指数からもそのことが浮き彫りになる中、「大きな組織のトップ」というバトンを受け取った注目のリーダーたちは、どのように考え、自分の色を出しながら動いているのでしょうか。そして、彼女がリーダーになった理由とは? トップダウンでも、ボトムアップでもない、これからのリーダーに必要とされるスキルについても考察します。

 政府が2020年の目標としていた「社会のあらゆる分野において、指導的地位に女性が占める割合が30%程度」、いわゆる「202030」は20年代のなるべく早い時期に先送りされた。最新のジェンダーギャップ指数(2021年発表)も世界120位と低迷。女性活躍で日本は引き続き、先進国の中で最低ランクにとどまってしまった。

 ただ、日本の女性リーダー層を巡っては動きもある。それが女性役員の増加だ。上場企業における女性の取締役・監査役の比率は18年の4.1%から20年には6.2%に(内閣府男女共同参画局の調査)。欧米に比較すればはるかに少ないが、この2年だけで1.5倍になった。

海外からの「ガイアツ」で女性役員が増え始める

 ジャーナリストの野村浩子さんは「国内と海外のギャップが最も表れるのが、女性役員の比率です」という。

 ESG(環境・社会・統治)投資を重視する傾向が世界的に強まり、特に海外の機関投資家から「女性役員を増やせ」の圧力が高まっている。女性役員がいない企業には投資しないと表明したり、株主総会で取締役選任議案に反対票を投じたりするところが増えている。

 「海外機関投資家が女性役員比率に注目する理由の1つは、企業業績と女性役員比率に相関があるとデータで実証され、認識が広まったこと。もう1つは、経営に多様な視点が入ることがリスクヘッジになり、企業のガバナンス強化にもつながるためです」(野村さん)

野村浩子/ジャーナリスト、東京家政学院大学特別招聘教授。「日経WOMAN」編集長、日本経済新聞社編集委員などを務める。20年以上にわたって働く女性をテーマに取材執筆、研究活動を続けている。近著に『女性リーダーが生まれるとき~「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成』(光文社新書)
野村浩子/ジャーナリスト、東京家政学院大学特別招聘教授。「日経WOMAN」編集長、日本経済新聞社編集委員などを務める。20年以上にわたって働く女性をテーマに取材執筆、研究活動を続けている。近著に『女性リーダーが生まれるとき~「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成』(光文社新書)

 2018年には、東京証券取引所の上場企業を対象にした「コーポレートガバナンス・コード(CGC)」に、取締役会の構成に関して「ジェンダーや国際性を含む多様性」という条件が入った。CGCは企業統治に関するガイドラインで、対象となる企業はその内容を実施するか、しない場合はその理由を説明することを求められる。東証CGCは今年も6月に向けて改訂が予定されており、女性管理職の登用など社内の多様性確保について考え方や目標、人材育成方針を開示するなど、さらに踏み込んだ内容が加わる見込みという。

 国際的な流れ、いわばガイアツ(外圧)によって日本企業の女性役員は増え始めた。とは言え、東証の上場企業でも、女性役員がまだ1人もいない企業は50%を超えていて、女性役員の人材ニーズは高まっている。