今の日本に圧倒的に足りていないもの。それは女性のリーダーです。120位というジェンダーギャップ指数からもそのことが浮き彫りになる中、「大きな組織のトップ」というバトンを受け取った注目のリーダーたちは、どのように考え、自分の色を出しながら動いているのでしょうか。そして、彼女がリーダーになった理由とは? トップダウンでも、ボトムアップでもない、これからのリーダーに必要とされるスキルについても考察します。

 伊藤忠商事常務執行役員と伊藤忠インターナショナルCEOを務める茅野みつるさん。伊藤忠商事に入社する前に弁護士事務所で活躍していた頃は「出世や肩書には全然興味がなかった」と話すが、伊藤忠商事に転職してからは、着実にリーダーの階段を上り、今では「リーダーになったことで見える景色が変わり、自身の成長も感じる」と話す。下編では、初めてのリーダー職を務めてから今に至るまで、変化を遂げていった、茅野さんの考える「リーダーとしてあるべき姿」について語ってもらった。

以前はジェンダー平等に無頓着だった

 茅野さんが法務部のチーム長となった2003年ごろの伊藤忠商事では、総合職は約3300人。そのうち女性総合職は70人もおらず、さらに女性管理職となると片手で数えるほどしかいなかった。ただ、男性ばかりの会議に女性が1人という状況でも、茅野さんは特に不都合を感じていなかったという。

 海外生活が長く、リベラルな家庭環境で育った茅野さんは、米国弁護士の資格を取得し、法務のスペシャリストとして男女の隔てなく仕事をしていたからだろう。「ジェンダー平等に関して無頓着だったんです。チーム長に任命されたときも、女性だからと意識することはなく、『負荷がかかるなあ、大変そうだけどできるかなあ』としか思わなかったくらいですから」

 そんな茅野さんに大きな変化があったのは、2003年。世界経済フォーラムの「次世代のグローバルリーダー」に選出され、ダボス会議に出席したときだった。