政府や企業が必死で女性活躍を進めているにも関わらず、昨年発表されたジェンダー・ギャップ指数は過去最低の121位に。いまだ管理職の座は男性で占められています。ジェンダーギャップの解消は、個人の問題だけでなく日本の国際競争力を高めるためにも急務。企業などの組織は、そしてARIA世代の女性たちは、何をすべきでしょうか。組織で働く女性管理職や専門家のインタビューで考えていきます。
ジェンダーギャップにまつわる主な法律の誕生
1985年 男女雇用機会均等法が成立(施行は86年)
1991年 育児休業法が成立(施行は92年)
1995年 育児休業法を育児・介護休業法に改正
1997年 改正男女雇用機会均等法が成立(施行は98年)
1999年 男女共同参画社会基本法が成立
2006年 改正男女雇用機会均等法が成立(施行は07年)
2016年 改正男女雇用機会均等法が成立(施行は17年) 
2018年 政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)が成立

女性が活躍しないと社会は良くならない

 成立から今年で35年を迎える男女雇用機会均等法。当時、労働省(現・厚生労働省)婦人少年局長として同法の制定に奔走し、「雇均法の母」と呼ばれる赤松良子さん。90歳を迎えた今も、「政治分野における男女共同参画推進法」の成立に働きかけた「クオータ制を推進する会(Qの会)」の代表を務めています。赤松さんは女性の社会進出を阻む壁にどう立ち向かってきたのでしょうか。

元文部大臣の赤松良子さん。1999年に女性議員を増やすための超党派の政治団体「WIN WIN」を立ち上げた
元文部大臣の赤松良子さん。1999年に女性議員を増やすための超党派の政治団体「WIN WIN」を立ち上げた

―― 女性官僚として、働く女性のための法整備に尽くしてこられた赤松さんですが、退官後も女性の政治家を支援するWIN WINや女性リーダーを育成する赤松政経塾などを主宰していらっしゃいますね。その行動の源にあるのはどんな思いなのでしょうか。

赤松良子さん(以下、敬称略) 私は労働省に長く在籍していましたが、若いときからずっと、女性が活躍しないと社会は良くならないと思ってきました。女性の地位の向上という仕事は婦人少年局(当時)の大きな柱の一つでした。その仕事をずっとしていましたから、女性の地位向上は私の一生の仕事だと思っています。役所を退職してからもずっと「女性の地位を向上させたい」という気持ちは変わりません。

女性政治家が増えない2つの理由

―― 日本のジェンダー・ギャップ指数が低い(世界経済フォーラムが発表、2019年の発表では153カ国中121位)要因の一つに女性の政治家が少ないことがあります。政治参加分野の順位は144位でした。なぜ日本では女性の政治家が増えないのだと思いますか?

赤松 理由はいろいろあるけれど、その要因を一つひとつ潰していかなくてはダメですね。まず、意識です。これは男女ともに持っています。男性の中には「男が上で女が下」と思っている人たちがいる。「女のくせに政治家になって偉そうにするのは腹立つから嫌だ」と。一方、女性は女性で「政治は女からは遠いもの」と思っている。この意識を変えないことには女性の政治家なんて増えません。

 女性政治家が増えないもう一つの理由は、お金がかかる選挙のシステムです。女性はお金集めが下手なんです。地域で力のある家に生まれたボンボンなら、何もしなくてもお金が集まってくるけど、女性にはそういうことがありません。意識とシステム。この両方変えることが必要です。

 女性の政治家が少ない社会は偏っています。一言でいえば「女が損をする社会」になっている。損するのが好きな人はいないけど、損をしていることが分からない人はいっぱいいる。「女性が損をしているのだ」と分からせることが大事だと思います。