政府や企業が必死で女性活躍を進めているにも関わらず、昨年発表されたジェンダー・ギャップ指数は過去最低の121位に。いまだ管理職の座は男性で占められています。ジェンダーギャップの解消は、個人の問題だけでなく日本の国際競争力を高めるためにも急務。企業などの組織は、そしてARIA世代の女性たちは、何をすべきでしょうか。組織で働く女性管理職や専門家のインタビューで考えていきます。

 厚生労働省が2017年12月に公表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子家庭(シングルマザー)の女性の平均年収は243万円。父子家庭の男性の420万円と比べても大きな差があります。またシングルマザーの正規雇用が44.2%なのに対し、パートやアルバイトも43.8%と同じくらいの割合を占めています。母子家庭が、「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々」を指す「相対的貧困率」の割合が高いことも指摘されています。

 日本のジェンダー・ギャップ指数が特に低いのは政治と経済の分野。シングルマザーの貧困は解決すべき問題の1つです。シングルマザーが置かれている現状と課題、対策について、日本シングルマザー支援協会代表で、自身もシングルマザーとして5人の娘を育てた江成道子さんに話を聞きました。

女性は「世帯を支える」という教育を受ける機会が少ない

―― シングルマザーの貧困問題、最も大きな課題は何でしょうか。

江成道子さん(以下、敬称略) シングルマザーの貧困問題を解決するためにまず大事になるのは、シングルマザーが「自立する」ための意識改革です。一般的に女性は男性より経済力が低く、貧困状態にある人が多い。それは子育てをしているからとか、正社員になれないからとかいろいろな理由が指摘されますが、私は女性の意識や、周囲の女性に対する見方を、根本的に変えないと解決できないと思っています。

 1つは本人に「稼ぐ」という意識が薄いという問題。でもシングルマザー本人を責めることはできません。子どものころから女性は、誰かを養う、世帯を支える、という意識を持つための教えを受ける機会が男性より圧倒的に少ないからです。男性の場合は、能力はともかく、多少なりともそのような意識を持つよう促されていきます。

江成道子(えなり・みちこ)
江成道子(えなり・みちこ)
1968年生まれ、東京都出身。保険外交員として勤務、リーダーとして新人の育成にも関わる。その後、子育てをしながらいくつかの企業で営業を経験し、起業前にはメーカーにてMD業務の傍ら新人育成、取引先研修等を兼務する。2013年7月に日本シングルマザー支援協会を設立し独立。シングルマザーの支援を通して、企業や行政との連携の中で、支援とビジネスの融合を目指し活動している。2度の離婚を経験、5人の娘と6人の孫がいる。著書に『シングルマザー自立への道』(啓文社)

 そして性差として、女性は男性よりも不安を感じやすいことが分かっています。小さな子どもを抱えている人はなおさらです。だから、収入が少なくても、責任が小さい仕事を選んでしまう。「女性の管理職を増やそう」と旗を振っても女性側が付いてこない、という話はよくありますが、それも理由は同じで、女性の不安や恐怖心を薄め、女性は自立する(自分で稼いで暮らしていく)べき、という教育をしていかなければ、制度を整えても変わりません。

 シングルマザーは特に、自分のできることや、失敗したくないという気持ちをベースに仕事を探しがちです。でも求人の幅は年齢とともに狭まり、収入も下がっていきます。「できることから仕事を探す」のではなく「必要な収入から仕事を探す」という意識が、貧困から抜け出すためには大事なのです。