パワハラ、マタハラ、リモハラ…職場でのさまざまなハラスメントが問題になっています。昔からの職場の慣習が思わぬハラスメントになったり、部下への言葉がパワハラと受け止められたりと、気づかないうちに自分が加害者になる可能性も。自分やチームの中のアンコンシャス・バイアスを排して、多様性のある職場をつくるための最新事情を専門家や企業担当者に聞きました。

 相手に不快感や居心地の悪さを与える職場のハラスメント。個人的な要因もあるが、意見が通りにくい閉鎖的な職場環境や、アンコンシャス・バイアスを押し付ける上下関係などがハラスメントを生み出す土壌になっている。お互いを尊重し、オープンなコミュニケーションのある組織づくりには何が必要か?

 幅広い国や地域からの出身者が多くを占め、9500人以上の社員が働くアマゾンジャパンと、AI通訳機「ポケトーク」などの販売で躍進するソースネクスト、2社の取り組みを取材した。それぞれにフラットな組織づくりにつながるルールや制度があり、「個人を大切にする」という共通の組織カルチャーがあった。

「さん付け」で呼び合うと話し方も丁寧になる

 ソースネクストには、お互いを「呼び捨てにしない」という組織のルールがある。上司を役職名でなく「~さん」と呼ぶだけではなく、部下や同僚を呼ぶときもさん付けにする。

 「平等なチャレンジの土台がある、実力主義の組織にしたいという創業者の思いがあり、社員全員がお互いを○○さんと呼んでいます。先輩が後輩を呼び捨てで呼んでいたら、上下関係が固定されてしまいますよね。普段から『おい、○○』と呼ぶ関係だと、実力がある若手を抜擢(ばってき)したときお互いがやりにくくなる。これは、『~ちゃん・くん』も同様で、そう呼んだ瞬間に上下関係が生まれます。『~さん』と呼びかけると、その後に続く言葉も威圧的な言い方ではなく、自然に『~してください』と丁寧になります」とソースネクスト代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)小嶋智彰さんは言う。

「社員全員が呼び捨てにしないので、新しく入った社員も自然にそうなります」とソースネクスト代表取締役社長 兼 COO小嶋智彰さん
「社員全員が呼び捨てにしないので、新しく入った社員も自然にそうなります」とソースネクスト代表取締役社長 兼 COO小嶋智彰さん

 同社ではプロジェクトごとに各部署からメンバーが集まることも多いが、役職で呼び合わないので、集まったメンバーにも上下関係が生まれず、遠慮や忖度(そんたく)、根回しなどがなく議論がスムーズに進む。「スピード感を上げていくには、コミュニケーションのロスをなくさなくてはいけない。スピード経営をする上でも、フラットなコミュニケーションや風通しの良さは大切にしています」