パワハラ、マタハラ、リモハラ…職場でのさまざまなハラスメントが問題になっています。昔からの職場の慣習が思わぬハラスメントになったり、部下への言葉がパワハラと受け止められたりと、気づかないうちに自分が加害者になる可能性も。自分やチームの中のアンコンシャス・バイアスを排して、多様性のある職場をつくるための最新事情を専門家や企業担当者に聞きました。

 職場のハラスメントを生む要因の一つにアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)があります。良かれと思ってやったことが裏目に出たり、意図せず相手を傷つける発言をしてしまったり。それはアンコンシャス・バイアスによって、お互いの認識や解釈にズレが生まれているからかもしれません。無意識の思い込みや偏ったモノの見方に気づくにはどうしたらいいのか。アンコンシャスバイアス研究所 理事の杉本美晴さんに聞きました。

自分も偏った見方や考え方を持っている

編集部(以下、略) ハラスメントにつながりやすいアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)とは、どういうものでしょうか?

杉本美晴さん(以下、杉本) アンコンシャス・バイアスとは、過去の経験や企業独自の慣習、これまで見聞きしてきた情報などによって、自分自身が気づかずに持つ偏った見方や考え方のことです。このアンコンシャス・バイアスは誰もが持っています。だからこそ、まずはそれに気づこうとすること、そして気づくことが大切です。

杉本美晴<br>アンコンシャスバイアス研究所 理事
杉本美晴
アンコンシャスバイアス研究所 理事
すぎもと・みはる/日本オフィスシステム勤務を経て、研修講師に転身。企業研修を行うアット・ワンスを起業。20年以上にわたり、コーチング、ビジネススキル、ハラスメント、クレーム対応など数多くのヒューマンスキル研修に携わる。2019年から現職

杉本 アンコンシャス・バイアスは、自分が見聞きした過去の経験に影響を受けています。それにより、「普通は~だ」「大抵~だ」「こうあるべきだ」と決めつけや押し付けの言動となって表れてしまう。それが、時と場合によって、相手を傷つけることがあるのです。「良かれと思っての言動」が、「悪気なく」相手を傷つけたり、悲しませたりする。ケースによってはそれがハラスメントに発展することもあるかもしれません。相手が必ずしも自分と同じような価値観や物の見方をしているとは限らないからです。

―― 過去の経験というと、蓄積の多いARIA世代はアンコンシャス・バイアスを持ちやすいのでしょうか?

杉本 経験が多いことが悪いわけではないですが、一人ひとりに目を向けず、十把一絡げなモノの見方をしたり、アンコンシャス・バイアスに気づかなかったりすると、新しい事象に気づかず、相手の存在意義を否定することにつながるかもしれません。今は社会全体が、それぞれの違いを生かす方向に向かっているので、チームの一人ひとりが生き生きと活躍するには、自らの考えを上書きしていくことが大切です。

―― 具体的にはどんな意識がハラスメントにつながるのでしょうか?