パワハラ、マタハラ、リモハラ…職場でのさまざまなハラスメントが問題になっています。昔からの職場の慣習が思わぬハラスメントになったり、部下への言葉がパワハラと受け止められたりと、気づかないうちに自分が加害者になる可能性も。自分やチームの中のアンコンシャス・バイアスを排して、多様性のある職場をつくるための最新事情を専門家や企業担当者に聞きました。

 ハラスメントの被害者にも加害者にもなりうるARIA世代。被害にあってしまっても加害者になってしまっても、どちらも息苦しい社会生活を送ることになってしまいます。実際に被害者にも加害者にもなった経験があるというハラスメント対策専門家の山藤祐子さんに、当時の状況や気持ちを振り返ってもらいました。

推薦でもらった内定をセクハラで辞退

編集部(以下、略) 自身の経験を生かしたハラスメント研修をしているとのことですが、ハラスメントの被害者でもあり、加害者でもあったと聞きました。

山藤祐子さん(以下、山藤) そうなんです。双方の立場を経験した実体験をもとに多くの企業や自治体に講演を行っています。私はセクハラとパワハラの被害者であったにもかかわらず、のちにパワハラの加害者になってしまった経験があるんです。

山藤祐子
山藤祐子
ざんとう ゆうこ/ハラスメント対策専門家、キャリアコンサルタント。1968年和歌山市生まれ。自身のハラスメント経験を生かし、ハラスメント専門研修講師として年間180日以上登壇。研修を実施した企業や自治体は200以上にのぼる。著書に『管理職・リーダーのハラスメント対策』(ハイテクノロジーコミュニケーションズ)など

山藤 最初に被害にあったのが、新卒で内定が決まっていた総合商社でした。親も喜ぶような有名な商社で、4月からスムーズに働けるように短大を卒業するまでの間にアルバイトにこないかと言われ、行くことにしたんです。そこで初日に目の当たりにしたのが、男性上司が女性の先輩たちのお尻をなでている光景でした。

 挨拶がわりのようにペロンと触りながら歩くときもあれば、打ち合わせをしながらずっとお尻をなでていることもありました。もちろん私も触られました。上司が「どんなケツも触るねん」と言えば、先輩たちは「もう〜、部長やめてくださいよ〜」と笑う。これを受け入れながら仕事する会社なんだなと思って、とても無理だと即内定を辞退しました。親にはもちろん、推薦枠で内定をもらった会社だったので大学にもひどく怒られましたね。

―― 親や大学に事実は伝えなかったのですか?