2025年、すべての団塊の世代が後期高齢者に。大量のARIA世代が、親世代の介護に直面する日が間近に迫っています。「仕事と介護の両立」は大きな社会課題。しかし多様な制度や働き方が、選択によっては両立を阻む落とし穴になることも。「まだ先」と思っている人こそ今すぐ始めるべき準備があります。知らないと致命的な介護の常識、両立の時間管理術、介護にかかるお金……専門家や介護経験者の実例を元に、すぐ役立つ情報をまとめました。

 親が高齢になり、介護の2文字が頭をよぎるようになると「仕事はどうしよう」「いったいどのくらいのお金が必要になるだろう」と、不安ばかりが押し寄せてはきませんか。漠然とした不安の正体を知るために、まずは介護にどのくらいの費用がかかるのか確認しておきましょう。介護のジャーナリストとして30年近く現場を取材し、AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持つ太田差惠子さんに話を伺いました。

親の介護のために自分のお金は使わないで

―― 親の介護費用っていくらくらいかかるんでしょうか? 今からとても不安です。

太田差惠子さん(以下、敬称略) その前に、親の介護費用を子が負担しようなんて思っていませんか? よほどゆとりがあれば別ですが、基本的には親の介護は親のお金の中だけでやるべきことです。子には自分の生活もありますから。

―― でも今まで親に育ててもらった恩を感じる人や、親にも少しでもいい老後を過ごしてほしいと願う人はいると思います。親側の資産が潤沢でなければ、子が少しくらい負担すべきではないでしょうか。

太田 「少しくらい」では済まないのが現代の介護です。平均寿命が延び続けている今、介護は数年では終わらなくなってきています。一度資金を投入し始めれば何十年と続く可能性もあるんです。そして介護費用はかけようと思えばいくらでもかけられるものなんです。

 私はよく「介護はプロジェクト」と言っています。子は、ヘルパーさんやケアマネジャーさんなど多くの人たちをマネジメントする司令塔の役割を果たさないといけません。仕事に置き換えて考えてください。予算がなくてはプロジェクトを進められませんよね? まずは介護というプロジェクトの予算を知ることがスタートです。そこで介護資金である親のお金がどのくらいあるのかを把握しなければいけません。

―― 親の全財産を聞き出すということですか? なかなか大変そうですね……。

太田 はい、ハードルが高いですが、聞き出すにはいくつかコツがあるんです。