2025年、すべての団塊の世代が後期高齢者に。大量のARIA世代が、親世代の介護に直面する日が間近に迫っています。「仕事と介護の両立」は大きな社会課題。しかし多様な制度や働き方が、選択によっては両立を阻む落とし穴になることも。「まだ先」と思っている人こそ今すぐ始めるべき準備があります。知らないと致命的な介護の常識、両立の時間管理術、介護にかかるお金……専門家や介護経験者の実例を元に、すぐ役立つ情報をまとめました。

 「介護は突然やってくる」というように、親の健康状態はいつ悪化するか分からない。子育てにまだ手がかかる時期に介護が始まる「ダブルケア」の状況になることは、今や珍しくない。実際に両親の介護と子育てに奮闘する人のケースと専門家の意見から、どんな準備や対策が必要かを学ぼう。

聡美さん(仮名)42歳 公務員
千葉県在住。小学校低学年と保育園年長の2人の子どもと、夫の4人暮らし。東京都内に住む両親が要介護認定を受けている。

聡美さん(以下、聡美) 私は現在千葉県に家族で住んでいて、千葉県内で働いています。兄が一人いますが同じく千葉県に住んでいて、両親は東京都内で二人暮らしをしています。

 最初に母の異変に気づいたのは、2019年の4月ごろ。子どものならし保育の時期に手伝いに来てもらっていたのですが、仕事から帰ると、使った食器がぬれたまま食器棚に入れられていたり、約束と違う日に来たりするようになって……。

 8月に母と神経内科を受診したところ、認知症の一歩手前との診断で、まだそれほど深刻でもないんだなという認識でした。

 10月に法事で両親が遠出した際に、母が転んで骨折しました。歩行が困難でしたし、認知症も心配なので、要介護認定申請のために実家近くの地域包括支援センターに相談に行き、11月に要介護1の認定がおりました。

 最初、地域包括支援センターでは、「自分でケアマネ-ジャー(以下、ケアマネ)と契約してください」と言われました。1カ月くらい自分で調べてみましたが、どういう人と契約したらいいか分からなくて、もう一度問い合わせてみたら、初めて紹介してもらえました。最初から紹介してもらえると思っていたので戸惑いました。

母の服薬管理に「お薬ロボット」導入

聡美 ケアマネさんと相談し、服薬管理がうまくいっていなかったので、2020年2月から週1で訪問看護を開始し、薬の残数管理をしてもらいました。

 母は、何十年間も内科で睡眠導入剤と安定剤を処方してもらっていて、それに依存していたことが分かりました。しかも、いろんな病院から似たような薬をもらっていたので、訪問医療に一本化して薬の管理ができるようにしたのです。

 5月に、母が薬を過剰に摂取して、夜中に失禁するということがあり、ケアマネさんに相談して、訪問薬局の「お薬ロボット」を設置してもらうことにしました。薬剤師が週に1回来て薬をセットしてくれて、服用の時間に、用量も必要な分だけ薬が出る装置です。同時に、デイサービスの利用も始めました。