リモート環境で仕事をすることが「新しい日常」になって1年近くたちました。直接顔を合わせずに打ち合わせをしたり、マネジメントしたりすることにも慣れたからこそ、コミュニケーションの質をもっと上げたいと感じる場面も増えてきたのではないでしょうか。ビデオ会議での印象をアップするコツやリモートでのチームマネジメント術、効果的なプレゼン方法など、テレワーク時代ならではの「伝える」テクニックをその道のプロに学びます。

部下の「情況」を把握できていますか?

 「テレワーク環境下では、上司やリーダーの方に、部下との1on1の機会を増やすことをお勧めしています」。こう話すのは、「テレワークで部下に嫌われる上司 マネジメントの3問題」について教えてくれた人材育成コンサルタントで産業カウンセラーの片桐あいさんだ。

 テレワーク時は、上司や先輩、同僚などと接点が持ちづらくなるため、目的や目標を共有するのが難しくなるという。「会社に出社していれば、近くには上司がいたり、隣には仲間がいたりして話しかけやすい環境で仕事をしていたはずです。問題やトラブルがあったときには、励まされたり気遣う言葉をかけられたりもしたでしょう。ところがテレワークになると、主に一人で仕事に向き合うことになります。もちろん、モニター越しに上司や仲間と話すことはできますが、同じオフィスで仕事をする環境と比較すると『つながっている』という感覚を持ちづらくなるのは仕方がありません。チームと切り離された環境の中では、モチベーションを維持するのが難しくなってしまうのです

 つまり、テレワークの環境下では、モチベーションが下がりがちな部下に対して、意識を高めるように誘導することが上司の大事な仕事の一つになる。そして、その際に有効なのが1on1というわけだ。

 「全体のミーティングでは、部下の感情までは分かりづらいはずです。例えば、『A社に断られました』という報告はできても、『断られて悲しかった』という感情まで吐露できる人は少ない。私は『じょうきょう』には2種類あると考えています。多くの人は『状況』を話すことはできても、感情も含めた状態や事情、やりがいを感じているかなどの『情況』まで話すのは苦手。そういった部下の『思い』を1on1で丁寧に拾っていくのです」

 では、具体的にはどのような頻度や長さで1on1を行っていけばいいのか。「主にテレワークでは、毎月1回、10分から15分でもいいので部下と1対1で面談することをお勧めしています。当然ですが、適切な回数は人によっても違います。チームで一律の規則を作るのではなく、まずはいったん全員に1on1を行い、その後、メンバーごとにどれくらいの頻度が適切なのか、時間が足りないのか、長いのかをレビューしながら最適なバランスを探ってください」

 次ページからは、テレワークの環境下で1on1を行う際に「特に重要な4つのポイント」を片桐さんに解説してもらったので、ぜひ参考にしてほしい。