リモート環境で仕事をすることが「新しい日常」になって1年近くたちました。直接顔を合わせずに打ち合わせをしたり、マネジメントしたりすることにも慣れたからこそ、コミュニケーションの質をもっと上げたいと感じる場面も増えてきたのではないでしょうか。ビデオ会議での印象をアップするコツやリモートでのチームマネジメント術、効果的なプレゼン方法など、テレワーク時代ならではの「伝える」テクニックをその道のプロに学びます。

 あらゆるコミュニケーションがリモート環境で行われるようになった今、社内外でのプレゼンテーションもパソコンの画面越しに行う機会が増えたのではないでしょうか。プレゼンテーションの達人として知られる圓窓代表取締役の澤円(さわ・まどか)さんは、2020年にオンラインプレゼンを約200回実施。対面とは全く異なるシチュエーションで効果的なプレゼンを行うためのポイントを、リモート取材で実演を交えながら教えてもらいました。

オンラインプレゼンは、ある意味平等

 オンラインプレゼンについて考える前提として、「オンラインであっても対面であっても、プレゼンテーションの本質は変わらない」と澤さんは強調します。

 「これは僕がいつも言っていることですが、プレゼンテーションはプレゼント、贈り物です。まず相手のことを徹底的に考えて、その人を喜ばせるにはどうしたらいいかを考えるのがプレゼントの神髄。ただ、それを渡すシチュエーションが大きく変わったということです」

 プレゼンにおける対面とオンラインの一番の違いは「視覚効果」。対面であれば、背の高さなどの身体的特徴や声のトーン、ファッションといった要素が、少なからず聞き手に与える印象を左右していました。しかしオンラインのプレゼンで相手が目にするのは、四角いパソコン画面に映る映像のみ。「対面に比べると、情報が極めて2次元的、平面的になってしまいます。でもそれによって、ある意味平等になったんです。

 例えば太っていることや小柄なことがコンプレックスの人っていますよね。でも、上半身しか映らない画面越しではそうしたことがほとんど気になりません。逆に、見た目など空間に依存する要素を武器にして、プレゼンの中身の薄さをごまかしていた人にとっては非常に不利になるともいえる。オンライン環境では、本質的に相手のことを一生懸命考えて用意したものが、確実に受け入れられやすくなっていると思います」

 対面に比べると変化に乏しくなりがちなオンラインプレゼンですが、裏を返せば「画面の中を徹底的にプロデュースすることで、『伝わり方』に大きな違いを生み出すことができる」と澤さん。次のページから、オンラインプレゼンが劇的に変わるテクニックを具体的に紹介します。

23年間在籍した日本マイクロソフト勤務時代から「プレゼンの神」とも呼ばれていた澤円さん。千葉県・九十九里海岸近くのセカンドハウスからリモート取材に応じてくれました
23年間在籍した日本マイクロソフト勤務時代から「プレゼンの神」とも呼ばれていた澤円さん。千葉県・九十九里海岸近くのセカンドハウスからリモート取材に応じてくれました