女性活躍推進やD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)は、もはや企業の努力目標ではありません。持続的な成長のための必須要件になりました。そこで、多様性のある組織づくりを積極的に進める企業のトップ、ジェンダーギャップの解消につながる施策を打ち出す投資家に、今の思いを聞きました。彼らは「女性にげたを履かせているのでは?」という批判にどう答えるのでしょうか。

 東証1部上場企業の時価総額ランキング上位300社(※)を対象に「女性取締役比率」を調査したところ、最も高かったのはローソンで42.9%だった。計7人の取締役のうち、女性は3人。3人とも社外取締役だが、6年前からローソンの社長を務め、女性活躍の推進に力を入れる竹増貞信社長にその理由を問うと、実にシンプルな回答が返ってきた。「やれることからやる」と話す竹増社長の思いとは?

「ダークスーツ一色」の会議に違和感

編集部(以下、略) 三菱商事からローソンに移って今年で9年目。社長としては6年目を迎えました。女性活躍の推進に力を入れていますが、その理由は何でしょうか。

竹増貞信さん(以下、竹増) 9年前は、商品開発会議などほとんどの会議の参加者が、自分も含めてダークスーツの“おじさん”しかいませんでした。見渡す限り男性ばかりの会議で「最近の女性は~」とか、「女性の健康志向が高まって~」等々、いろんなことを議論していたんですが、まずその光景にすごく違和感がありました。

 会議が男性ばかりだった一方、店舗を回っていると働いている方は女性が断然多かった。さらに消費者、お客様を見れば、当然、男女が半々なわけです。もっと広く皆さんに使っていただけるコンビニになろうとしている中で、一番変われていないのは私たちがいる本部なんじゃないか、と痛感したんです。

 地球全体が一つの社会だと考えると、男性、女性、いろんなジェンダーの方がいらっしゃる。文化や気候も違って当たり前。ダイバーシティに富んでいますよね。私たちローソンは、日本、中国、東南アジア、ハワイで幅広く商売をしているのに、単一的な考えで物事が決められるのはおかしいし、すごくもったいない。

ローソン代表取締役社長 竹増貞信
ローソン代表取締役社長 竹増貞信
1969年生まれ。93年大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。畜産部に所属し、牛肉輸入業務に携わる。米国グループ会社への出向、広報部、三菱商事社長秘書などを経て、2014年にローソン副社長に。17年3月から現職。趣味は釣りと料理

竹増 松下幸之助さんの本を読んでいたときに、印象に残った話があります。人はみなダイヤモンドの原石を持っていて、その原石を見つけて磨くのが社長の仕事だ、と。人それぞれに得意なことは違い、価値観もさまざま。社員の得意なところを一生懸命見つけて、それを磨いて一人ひとりがダイヤモンドのように輝ければ、会社はとんでもなく良くなるし、社長である自分はとんでもなく楽だと。

(※)日経xwoman編集部調べ、2021年7月6日時点